司法試験受験時代の夢と言っても、「どえらい弁護士になってやる!」というような夢ではなく、実際に寝ていたときに見た夢のはなしである。
私は受験生時代が長かったせいもあり、その時点で中学校の同級生2人、大学のクラブの同期生1人が既に鬼籍に入っていた(いずれも事故)。
受験時代には、相当追い詰められていたこともあり、不眠症にも陥ったがその不眠症のときに、夜も昼も熟睡できず、うつらうつらしていたときに、夢を見た。
私は、既に亡くなった3人の友人と食卓に着いていた。
どうやら中華料理のお店らしく、赤い丸テーブルに私を含めて4人で座っている。
中学時代の2人とは高校も違ったし、なにより、大学のクラブの同期生は私の中学時代の友人など知るはずもないのだが、みんな、すっかり打ち解けて、楽しそうに談笑し、美味しそうに料理を食べている。
確か、みんな、様々な料理を勧めてくれるのだが、どういうわけか食欲がない私は、全く料理を食べない。友人達は無理に料理を勧めることはなく、談笑は続いた。
そのうち、何かの拍子に、テーブルの下をのぞくと、3人は靴を履かずに、靴下だけだった。しかも、そろって赤い靴下をはいている。夢は見ている間は妙にリアルで、しかし、リアルなくせに、奇妙きてれつなことでも素直に受け入れてしまうところがある。
ただ、そのときだけは、何か違った。
赤い靴下をそろって履いている3人に非常な違和感を覚えたのだ。
その後どうなったか目が覚めたので忘れてしまった。この夢は、ずいぶんと忘れていたのだが、合格して弁護士になったあと、「よもつへぐい」という言葉を聞いて思いだした。
「よもつへぐい」とは、黄泉の国で煮炊きした料理を食べてしまうことであり、食べてしまった者は二度と現世には戻れない。日本神話でも、「いざなみ」は、「よもつへぐい」をしてしまったため帰れなかった。
私の見た夢の3人は、私と仲が良かったので、多分励ましに来てくれていたことは間違いないだろうし、きっとそうだろうという確信はある。しかし、よもつへぐい、という言葉を知ったときは、少しだけ夢の中で料理を無理強いしなかった、友人達に感謝の思いがわいた。
他にも不思議な夢を見たことはありますが、それは後日お話しします。