弁護士の就職難~大学受験にも影響??

 河合塾といえば、私の受験時代は、大学受験予備校御三家だった。

 受験生は俗に、生徒の駿台、講師の代ゼミ、机の河合塾(つまり、比較の問題として、駿台は生徒の質が高く、代ゼミは講師の質が高く、河合塾は設備の質が高い、という程度の意味)と呼んでいたように記憶している。

 その河合塾が「2011年度入試の展望③~法学系の志望動向」を公表している。

http://www.keinet.ne.jp/doc/topics/news/10/20101101.pdf

ここでの大きな特徴は、国立・私立とも、成績上位層で法学部志願者の減少が目立つということだ。

 この原因についての河合塾の分析は次の通り。

「難関大での法学離れは、新司法試験合格率の低迷や弁護士の就職難等がニュースになっていることとも無関係ではないだろう。(中略)新司法試験は、法科大学院修了後、5年以内に3回まで受験できる。しかし、3回とも不合格となった場合、30歳前後の年齢で無職・職歴なしとなってしまう。例え努力が実を結び、法曹界に入ることが出来たとしても、今度は就職難が待っているかもしれない。現在の状況では法曹界に魅力を感じにくい。」

 極めて当たり前、且つ素直な分析であり、優秀な人材を法曹界に導くことが困難になっている現状が明確になっている。

 多様な人材を法曹界に導くためのものだったはずの司法改革による新制度導入が、法曹界の魅力を著しく減退させ、優秀な人材が逃がしつつあることは、余りにも明らかだ。

 優秀な人材が弁護士にならなくても、数さえ増やせば競争で自然淘汰されるから良いではないかとの楽観論もあるが、それは、競争する仕事の質をクライアントが理解できる場合に限り妥当する。おそば屋さんのように食べてまずけりゃ行かなきゃいい、という簡単なものではない。

 その結果、優秀な弁護士が生き残るわけではなく、営業上手の弁護士が生き残ることになる。現にあれだけ弁護士が余りまくっているアメリカでも、お金持ち・大企業以外の中産階級がどうやって弁護士を選ぶかという問題は解決されていないのだ。

(下記の当職のブログ参照)

http://www.idea-law.jp/sakano/blog/archives/2010/10/22.html

 ずいぶん前から言い続けているが、早く手を打たないと大変なことになってしまうと思うのだが。

 いまだに、増員論者は論点を国際競争力などにすり替えて、持論を維持し続けようとするが、国際競争力の前提となる語学に堪能な弁護士の比率(人数ではない)が、新制度の大増員になって急激に増加したという裏付けはどこにもない。

 もし、本当に国際競争の観点から、語学堪能で法律素養を持つ資格が要るのなら、別個に資格を設け、試験に語学を必須にするくらいの改革をしないと無理だろうし、何より企業がそう望むだろう。

 年始早々、血圧の上がる話になってしまうので、これくらいにしておくが、一つさらに血圧の上がりそうな嫌な噂を聞いたので紹介しておく。

 法科大学院制度導入+合格者大幅増員に賛成した、弁護士のうち、相当数は自分の子供が、司法試験になかなか合格しなかったことも隠れた理由だったのではないのかという噂だ。私の記憶では、(合格者を圧倒的に増やした時期を除き)旧司法試験ではその競争率の高さゆえ、東大・京大卒の受験生でも(記念受験もそこそこいたが)約12~15人に1名くらいしか合格しなかったはずだ。いくら優秀な弁護士の優秀な子供でも、相当程度の努力をしなければ、合格できなかった。

 確かに、弁護士として活躍し地盤も築いた人にとっては、自分の子供に地盤を任せたい気持ちは当然あるだろうし、気持ちとしては理解できる。実際に、新制度になってから、おそらく2世弁護士の数はかなり増えた可能性がある。

 上記は、あくまで噂だが、心情的には、あり得ない話ではないかもしれない。

 もし本当なら、嫌なやり口だね。 

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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