距離の疲労

 私の田舎は、和歌山県の南部、太地町にある。

 帰省する際に京都から列車を利用すると、距離は300㎞弱だが、特急と普通列車を併せて約4時間以上はかかる。これに比べて、出張で東京に行く際に京都から「のぞみ」を使えば、距離は510㎞くらいで2時間15分だ。

 時間だけの比較をすると、帰省する方が東京に行くよりも2倍くらい疲労しそうだが、実はそうでもない。むしろ、乗っている時間が短いはずの新幹線を利用した場合でも、表面的疲労は少なくても身体の奥底に、じっとりとまとわりつく変な疲労が蓄積するような気がする。

 人間の身体がどこまで敏感なのか分からないが、新幹線を降りてホームのエスカレーターあたりで、乗っていた時間以上の疲労を身体に感じると、ため息をつきながら、「身体は距離を感じているのだ」と実感するときがある。

 ただ妙なモノで、この距離の疲労の問題は、列車移動の場合に特に顕著に感じられるようにも思う。航空機を利用する場合は身体が距離を感じる前に目的地に到着してしまうか、出発・到着の空港の非日常的な雰囲気に飲まれてしまう感じで、距離の疲労を感じることが少ないようにも思うのだ。

 人間の身体が、距離に対して敏感なのか、鈍感なのか、私にも分からない。

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