司法改革と裁判官・検察官の増加?

 どんなに鉄道が整備されたとしても、駅がなければ沿線住民の方は、その鉄道を利用できないだろう。また、駅があっても、1週間に数日しか列車が止まらない駅であれば、不便この上ないので、沿線住民の方もあまり利用しなくなるだろう。当たり前のことだが、このような状況が続けば、いくら鉄道を整備しても、沿線の住民の方は大して便利にならない。

 マスコミは、「弁護士を増やせ、それが司法改革だ」と、何とかの一つ覚えのように繰り返し、ちっとも取り上げてくれないが、司法改革に関して、これに似た状況が現れている。

 全国には地方裁判所・家庭裁判所の本庁50カ所と、支部203カ所が設置されている。地方検察庁もこれに対応して、本庁50カ所と、支部203カ所が設置されている。

 2010年8月の日弁連の調査によると、裁判官が常駐していない支部は全国で46カ所、法曹資格を持つ検察官が常駐していない支部が全国で128カ所存在している。例えていえば、医者のいない病院や、消防士のいない消防署ようなものだ。

 このような支部には、裁判官や検察官が他の裁判所・検察庁から出張してきて裁判が行われるが、当然その裁判官・検察官も本来勤務している場所での仕事があるから、毎日出張ではないことが多い。したがって、裁判官・検察官が常駐しない支部では、開廷日数が少なく開廷期日が入らない、開廷期日に事件が集中し十分な審理が出来るか不安がある、等の問題が出てくる。民事裁判において証人尋問等の実施率が減少の一途をたどっていることも、このような裁判官非常駐支部の存在と無関係ではないかもしれない。

この点弁護士は、弁護士ゼロの地域はなく、弁護士1名の地域(支部)もわずか5カ所になっている。ここ10年で弁護士は9700人増加しており、都会だけでなく、地方での弁護士へのアクセスもずいぶん改善されている。

 これに対し、裁判官はここ10年で600人、検察官はここ10年で200人しか増加していない。このあたりの事情は、日弁連が2010年10月に発行した「全国各地に裁判官、検察官の常駐を!~裁判官、検察官ゼロ支部の早期解消を目指して」と題したパンフレットに詳しい。

 そもそも司法改革は、市民が利用しやすい司法を目指し、弁護士だけではなく、裁判官・検察官も増員し、司法の容量を増やすことも目的としていたはずだった。

 マスコミはことあるごとに、「司法改革=弁護士の増加」を叫ぶが、三輪車のタイヤの一つだけが大きくなっても早く走れるものではない。司法改革の原点に立ち返るのであれば、当然裁判官・検察官の増員も必要になる。

 当たり前だが、現状が続けばさらに法曹三者のいびつな構造は、助長されていく。これで良いはずがないだろう。

 従前取り決めた路線で司法改革を実行すべきだと、本気でマスコミが思うのなら、どうしてこのことを大きく取り上げないのだろうか。

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません。

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