法曹養成制度再検討~その4

(続きです。)

(4)設立手続きおよび第三者評価(適格認定)

ア 法科大学院の設置状況および入学定員の状況

理念~法科大学院の設置は、関係者の自発的創意を基本としつつ、設置基準を満たしたものを認可することとし、広く参入を認める仕組みとすべきである。

現状~74の法科大学院が設置されている。法科大学院の定員は、5825人であったが、H20・21年は5765人、H22年度定員は4909人入学者4122人である。

※坂野の分析

 当初は、極論で東大・京大のみ設置、多くとも10~20校程度の設置が想定されていた、という話を聞いたことがあるが、若者の人口が減少する中、法科大学院を持たない法学部では意味がないと思われるのではないか(自分の大学を志望する学生が減少する)、と危惧した各大学から異論が出て、広く認可を認める方向で決着を見たようである。

 その結果、74校もの法科大学院が乱立した。一説によると公明党が創価学会の関連する創価大学に法科大学院を認可させるために認可基準を大幅に緩和するよう横車を押したとの説もあるそうだが、少なくとも、これだけ大量に法科大学院を認可した時点で、合格率7割は夢のまた夢となり、当初の法科大学院構想の破綻は決定的になった。この時点で近い将来破綻することが明らかであった法科大学院制度を強行した法科大学院側・文科省(そして盲目的に後押ししたマスコミ)には、大きな責任があるというべきである。

 また、定員が4909名でありながら入学者数が4122名であるということは、(問題だらけの)法科大学院から見ても、法曹を志願している者ではあるが、その基礎能力から見てとても法曹としてふさわしい能力を身につけさせることができないと判断した結果とも考えられ、法曹志願者の質の低下を裏付ける一資料と考えることもできるだろう。

さらに、どんなに野球の指導者が素晴らしく、指導設備が整っていたとしても、毎年100名以上の大リーガーにふさわしい選手を育成することは日本国内では不可能だろう。それと同じで、仮に法科大学院教育が素晴らしくても、よほど素質のある人間が争って応募しない限り毎年2000人以上の人間に法曹にふさわしい実力を身につけさせることは極めて困難であろうと思われる。先日書いたように、多くの法科大学院で、教員に適切な実力がないとの事実が明らかな現状ではなおさらである。

(4)認証評価の実施状況

理念~審議会意見書によれば、入学者選抜の公平性、開放性、多様性や法曹養成機関としての教育水準、成績評価・修了認定の厳格性を確保するため、適切な機構を設けて、第三者評価を継続的に実施すべき。

現実~第三者評価期間は3つ存在。平成22年までに全74校が審査を受け、適格認定は50校(不適格は24校)。文科省は平成22年3月に認証評価の細目について定める省令を改正。

※坂野の分析

 不適格校であれば、そもそも法科大学院として失格ということになるのなら、その卒業生が新司法試験を受験できるということは、プロセスによる教育という理念から考えれば明らかにおかしい。そもそも事後的審査で不適格になる法科大学院が認可されていること自体、文科省に大きな責任がある。

 H22年改正の細目は見ていないが、少なくとも日弁連法務研究財団の適格認定は極めて形式的なものであり、法科大学院に適切な教育能力があるかという点からの配慮は乏しいように思われる。実務家を養成する法科大学院の教員のうち、実務家教員以外の教員のうち、90%以上は司法試験に合格したこともなければ、司法修習を受けたこともないと聞いており、どのレベルまでの教育(知識・応用能力)が法曹に必要なのかという最も肝心な点ですら、何も知らずに教育を行っていると思われる。

(続く)

※記載内容については、全て執筆者の個人的な見解に基づくものであって、当事務所の統一した見解・意見ではありません

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