法曹養成制度再検討~その2

(前回の続き)

第3 法科大学院教育の問題点と改善方策の選択肢

 1 審議会意見等に示された理念及び現状

 (3)教育内容及び教育方法(厳格な成績評価及び修了認定)

 理念~法科大学院では法理論教育を中心としつつ実務教育の導入部分をも併せて実施。実務との架橋を強く意識した教育を行うべき。少人数教育を基本とし、双方向的・多方向的で密度の濃いものとすべき。法曹となるべき資質・意欲を持つ者が入学し、厳格な成績評価及び修了認定が行われることを不可欠の前提とした上で相当程度のものが合格できるよう充実した教育を行うべき。関連法規には・・・将来の法曹としての実務に必要な学識及びその応用能力・・・・並びに法律に関する実務の基礎的素養を涵養する為の理論的且つ実践的な教育を体系的に実施し、厳格な成績評価及び修了認定を行うこととされている。

 現状~

 ア 法科大学院標準終了年限での修了認定率は80.6~78.6%。

 イ 平成17年度修了者の7割以上、平成18年度修了者の5割以上は最終的に新司法試験に合格。

 ウ 法科大学院間の合格率は相当な開きがあり、平均合格率以下の法科大学院が57校、平均合格率の半分にも満たない法科大学院が27校存在。累積の最終合格率も全体の累積最終合格率の半分にも満たない法科大学院が少なくない(H18年度17校、H19年度26校)。

 エ 新司法試験に出願し法科大学院を修了していながら実際に受験しないものの数が年々増加(H18年に1.6%→平成22年に25.2%に)。

 オ 法科大学院特別委員会が法科大学院26校について一部科目の定期試験問題と答案を確認したところ、「可」とされた、答案の中に「不可」相当のものが少なからず見られ、試験問題も学習到達度を測るのに適切か疑問を感じさせるものが見られた。

※坂野の分析

 ア→標準終了年限によるものですから、留年なども含めると、終了率はもっと高くなるでしょう。厳格な成績評価及び修了認定がなされているのか、終了率からは大いに疑問です。

 イ→H17年度修了者は終了後4年経過、H18年度修了者は終了後3年経過しているので、このような数字を出すことに意味があるのかということ自体疑問があります。法科大学院卒業後3~4年も新司法試験向けに勉強した場合、おそらく予備校に通っているでしょうから、果たして受験技術に偏重しないという法科大学院の理念に沿った修了者といえるのか、大いに疑わしいことになるでしょうね。

 ウ→つまり、法科大学院74校中、77%の法科大学院が平均合格率を下回る修了生しか出せないし、36%の法科大学院は平均合格率の半分にも届かないということです。平均合格「率」ですから、新司法試験の合格者の数が思ったより増えないことは全く関係ありません。うちに来たら法曹になる教育をきちんとするよという看板を掲げていながら、その実力がない法科大学院が極めて多いことが分かります。こんな商売やってたら、詐欺的商法と言われて、提訴されても仕方がないように思います。

 エ→法科大学院を修了しながら新司法試験を受験しない人が、なんと4分の1以上です。おそらく三振制度があるので実力がつくまで受け控えをしているのでしょう。しかし、そもそも法科大学院は厳格な成績評価及び修了認定をしているはずなので、法曹になる(新司法試験に合格できる)実力がないのであれば、卒業(修了)させない制度ではなかったのでしょうか。だからこそ、法科大学院制度を導入しても法曹の質を落とさないと豪語していたのではなかったのでしょうか。法科大学院が法曹になる実力があると認定しながら、その本人が実力不足を感じて受け控えるというのでは、どちらが正確な評価をしているのかわかりゃしません。再度言いますが、厳格な成績評価及び修了認定を行うという以上、法科大学院が法曹となるのに十分な資質と応用能力を身につけさせたと、自信を持っていえる者しか卒業させないのが本来の理念ではなかったのでしょうか。法科大学院の厳格な成績評価及び修了認定が、殆ど内容のない評価と認定に堕していることは、この事実からも推測できます。

 オ→私がエで述べたことを裏付ける、とんでもない実態が指摘されています。「不可」相当の答案を「可」としていること自体、法科大学院は法曹の質を落とさずに新しい法曹を生み出すという、国民との約束に対する裏切りですし、「可」をもらった法科大学院生にも誤解を与えます。まさかとは思いますが、「不可」答案を敢えて「可」と評価して進級させる理由は、翌年の学費を支払わせるために、落第させるべき学生を敢えて落第させていないのではないか、とすら思えてきます。また、試験問題自体不適切という例もあるようです。教員が出す試験問題自体が不適切な問題だとすれば、きちんとした出題能力すらない教員が、堂々と法科大学院で教鞭を執っている事実があるということです。法科大学院の教員がその体たらくでは、学生は一体誰を頼って勉強すればいいのでしょうか。法科大学院を信頼して、学費を納め、自らの一生を掛けて懸命に努力している学生に対し失礼であることはもちろん、そのような教育を施しながら法曹の質を維持できると国民に言い放つ法科大学院は、あまりにも無責任な存在になりつつあるのではないでしょうか。

(続く)

★あまりの内容に、私が片寄った引用をしているとお思いになる方もおられるかもしれません。

 しかし、昨日のリンク先PDFファイルをご覧になれば分かりますが、「現状」までは、法科大学院関係者を含む法曹養成制度ワーキングチームが、現実に存在する法科大学院の実情を、調査の上まとめたものであり、私が殊更に法科大学院に不利な内容を引用したわけではありません。是非、昨日の私のブログに記載したリンク先PDFファイルをご覧になって頂ければと思います。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です