法曹養成制度再検討~その1

 法務省の法曹養成制度に関する検討ワーキングチームが、検討結果のとりまとめをしています。

 ワーキングチームは、加藤公一法務副大臣、鈴木寛文科副大臣、林眞琴法務省官房人事課長、深山拓也法務省官房司法法制部長、德永保文科省高等教育局長、菅野雅之最高裁事務総局審議官、片岡寛東京地検総務部長、丸島俊介日弁連嘱託、井上正仁東大大学院法学政治学研究科教授、鎌田薫早稲田大学大学院法務研究科長、中村哲司法務大臣政務官、高井美穂文科大臣政務官らで、構成されていたようです。

 この検討結果のとりまとめは、今年7月6日に公表されたものでありますが、まだ読まれていない方のために、以下にPDFファイルへのリンクを貼っておきます。

http://www.moj.go.jp/content/000050026.pdf

 このとりまとめを読むと、意見の分かれた部分については、両論併記になっておりますので、結構面白い事実が沢山書かれています。

 司法制度改革審議会意見の提言・理念に現状が沿っているかどうかという観点から検討されているようです。

 そもそも司法制度に旗を振ってきた法務省・文科省のお役人と法曹三者、法科大学院関連者の集合ですから「司法制度改革万歳」のとりまとめになるかと思いきや、司法制度改革の問題点、法科大学院の問題点もそこそこ指摘されています。

 この人選にしてこの検討結果という事実は、裏を返せば相当大きな問題が今回の司法改革に於いて生じていることを意味すると思われます。PDFファイルはかなり大部のものなので、要点を私なりにまとめてみたいと思います。

第1 はじめに

→司法制度改革審議会意見の提言と新しい法曹養成制度の歴史の概観

第2 検討の基本的視点

→基本的には現状が司法制度改革審議会意見の提言に沿うものになっているかの観点で、問題点・論点を検討。意見が分かれた場合は両論併記

第3 法科大学院教育の問題点等と改善方策の選択肢

1 審議会検討に示された理念及び現状

(1) 入学者選抜

ア 入学者の多様性の確保

  理念~多様なバックグラウンドを有する人材を多数法曹界へ。法科大学院の理念も入学者の多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜が必要

  現実~法科大学院適性試験志願者数は一貫して減少(H16とH22を比較すれば志願者は三分の一に)。非法学部出身者及び社会人の割合も年々減少傾向(H16とH22を比較すれば社会人の入学は48.4%→24.1%に半減)

 ※坂野の分析→志願者が減れば優秀な人材が集まらないことは明白。優秀な人材の法曹界離れが加速中?また多彩な人材を法曹界へという目的も既に破綻。H18~H20の新司法試験では非法学部率は約11~23%、平成15~19年度の旧司法試験でも非法学部率は約15~23%(ちょっと古い資料しか見当たらず)なので、この資料から見る限り、新司法試験になったから多彩な人材が確保出来るようになっているとは到底言えない。

イ (法科大学院)入学者の適正の適格な評価

  理念~法曹となるべき資質と意欲を持つ者を入学させることを不可欠の前提とする。入学者の適正の適格な評価に配慮して法科大学院は入学者の選抜を行うこと。

  現実~相応の競争原理が働き、適正な入学者選抜が確保できると考えられる最低限の競争倍率2倍に満たない法科大学院が74校中、42校(H21)、40校(H22)、H22年度には競争倍率1.06倍という法科大学院まで存在。

 ※坂野の分析→法科大学院入学時点で競争が働かないのだから、一部超有名校を除き、どこまで優秀な人材を法科大学院が(全体として)確保できているのか極めて疑問。現在では、優秀者には授業料無料等の特典を与えるなどして、優秀な受験生をかき集めようとしている法科大学院もあると聞いており、いかに学生を優秀な卒業生に育てるかという法科大学院の本分よりも、以下に優秀な学生を集めて合格率を上げるかに、重点が移りつつあるように思われる。新司法試験合格者も、上位校に集中する傾向が顕著であり、法科大学院のランク化が進展中。

(続く)

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