霧越邸殺人事件~綾辻行人著

~ある秋深き日、山深い信州の山中で、猛吹雪に襲われた劇団員たちの前に、忽然と現れた謎の洋館「霧越邸」。あまり好意的ではない住人に無理をいって一夜の宿を求めた劇団員たちだったが、猛吹雪で外界との連絡は遮断される。雪に閉ざされ孤立した洋館の中で、起こる連続殺人事件。屋敷に起こる兆しは何を意味しているのか。屋敷の主から探偵役を言いつけられた槍中は、必死に犯人を推理していくのだが・・・・・~

 推理小説ですので、これ以上のご紹介は出来ません。

 綾辻行人さんは、いわゆる「館シリーズ」で非常に有名な推理小説作家ですから、今さらご紹介するまでもないでしょう。私も、綾辻さんの小説は大好きで、文庫化された「館シリーズ」は全て読んでいます。

 館シリーズではないのですが、この「霧越邸殺人事件」は、私が相当気に入っている作品です。

 謎めいた力を持つ不可思議な霧越邸。そこを舞台に展開される連続殺人事件。殺人というあまりにも非人道的な行為が連続して起こるのですが、なぜか、静謐というべきか美しいというべきか、誰もたどり着けない山奥で、いつも霧に包まれ、人知れず、いつまでも佇む深い湖のような、作品に漂う独特の「幻想的な雰囲気」は最後まで壊れることがありません。

 おそらく忠実な映像化は非常に難しいでしょう。日テレで、湖畔の館殺人事件としてドラマ化されたことがあるそうですが、「霧越邸殺人事件」として万一映像化できるのであれば、絶対にTVドラマではなく、銀幕で上映して欲しい。そして、深月役には、本当に清潔感ある美しさと儚さとを併せ持つ女優さん(具体的に思い浮かばないのが残念)に演じてもらいたい、と強く思います。

「幻想的な雰囲気」がお好きな方には、秋の夜長に、オススメの一冊だと思います。

 新潮文庫 900円

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