司法過疎と「全国の弁護士需要」連載終了

日弁連が会員(つまり弁護士)向けに発行している「自由と正義」という月刊誌がある。

 その自由と正義に2009年1月から「全国の弁護士需要~地方での開業を考えてみませんか・あなたを必要としている地域があります」という記事が、連載されていた。狙いは、地方に弁護士需要があることを若手弁護士に伝えることが主であったようだ。

 その連載が、今月号(2010年9月号)で終了する。これまで42の弁護士会からの記事が掲載されてきた。私も時々見ていたが、最近は、「大きな需要は見込めない」、「会員の急増で、若手会員は先行きへの漠然とした不安を抱いている」などの記事があり、弁護士不足なのでどんどんうちの弁護士会に来て欲しいと両手をあげて弁護士を求めている弁護士会は、ほぼ見当たらなかったように思う。

 連載終了にあたって、日弁連公設事務所・法律相談センター委員の岩田研二郎弁護士(私も若干面識があるが、非常に温厚な先生という印象がある)が書いておられるが、「特に、ここ2,3年で地方弁護士会における若手会員が急増している状況の下で、どこでも本庁における弁護士需要は充足感があり、必ずしも『地方に来ればなんとかなりますよ』と手放しで言えない状況」になっているのだそうだ。

 「あなたを必要としている地域があります・地方での開業を考えてみませんか」と副題をつけたこともあり、執筆をお願いしても、執筆を見合わせる弁護士会もあったそうだ。

 地方にさえ行けば、緑の地平が広がっているという時代はもう過ぎたと言わざるを得ない。

 逆に言えば、司法過疎もかなり解消されているはずだ。ここ10年で弁護士の数はほぼ2倍になったのだし、地方でも法律相談の予約枠が埋まらないなど、法律相談のために弁護士を配置しても相談者が来ないこともあるそうだ。

 マスコミが何十年も言い続けている司法過疎は、昔はともかく、今では、ひょっとしたら実態のない「お化け」なのかもしれないね。

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