NZの街はずれのB&Bで

 NZ(ニュージーランド)では、観光地や割と大きめの街にはホテルもありますが、B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)の方が、断然リーズナブルだと思います。

 B&Bは、広い自宅の一部を民宿のように使って、宿と朝食を提供してくれるもので、オーナーはホストと呼ばれているようです。ホストにもいろいろあって、こちらのプライバシーを尊重してほとんどほったらかしのホストもいれば、親切にいろいろ見所を教えてくれたり、夜に一杯飲みながら話そうと言ってくれるホストもいます。もちろん、朝食もホスト次第で、とても美味しい朝食を作ってくれる所もあれば、シリアルと、スーパーで買ってきたのが見え見えのパンに、切り刻んだフルーツだけ、というところもあります。

 私は、NZ南島の、ある小さな町のB&Bに泊まったのですが、街はずれであったこともあり、ものすごい数の星を見ることが出来ました。 南半球なので、自分の星座の知識が通用するのかもよく分からなかったのですが、余りの星の多さに、星座の知識があっても星座を見つけ出すことが出来ないような思いをしました。

 季節は、NZの晩秋の頃ですので、おそらく気温は5度くらいだったと思います。明かりを落としたB&Bの芝生の庭で、椅子に腰掛けて星空を見ていると、遠くのどこかの家でカントリーミュージックを流しているのが、ほんのかすかに聞こえてきます。

  どこかの家から、暖炉に使っているらしい、薪を焼く匂いが漂ってきます。ひんやりしすぎるくらいの温度です。道路が近くにありますが、数分に一台しか車は通りません。

 うわ~すごい、という思いしか浮かばずに、余りに多くの星たちを、ため息をつきながら眺めていると、なぜだか、高2~高3の秋頃に感じたことがある、寂しいような、どうしようもないような、けれども確かにその頃自分が感じていた感覚がよみがえってきました。おそらく、星空だけではそのような思いは出来なかったでしょう。かすかに聞こえる音楽、暖かみを感じる匂い、ひんやりと張りつめながらなおやさしい空気などが、たまたま、ぴったり私の中の条件に合致して、初めてそう感じられたように思うのです。

 当時の記憶が蘇ったというのではありません。当時の記憶や感情と関連せず、純然たる感覚だけが蘇ったような気がしました。

 上手く表現できないのが残念です。

 何とか言葉にするとすれば、その頃に感じたことがある感覚が、私の中で時の破壊力に負けぬよう心の奥底に封じ込めていたその感覚が、このものすごい星空や澄んだ空気などによって、不覚にも解き放たれてしまったかのように、不意に蘇ってきた、と表現した方がより正確かもしれません。

 素晴らしい星空の他、忘れていた感覚を思いがけず体験することが出来、なんだか得したような気になった夜でした。

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