温度差

昨日の日経新聞に、公認会計士試験が、新試験に移行後5年目にして、見直しを迫られているという記事が載っていた。

 公認会計士5万人を目指して合格者を急増させたものの、受け入れ体勢が調っておらず、就職難が生じているからだそうだ。「前の試験の方がまだ良かった」と述べる、ベテラン会計士もいるそうだ。

 公認会計士は

 2000年に 16656人

 現在では  28539人

 に増加している。

 弁護士は

 2000年に17126人

 現在では28831人となっている。

 実は、弁護士の就職難もかなり深刻で、新司法試験に合格し、司法修習を終え、2回試験に合格して、いつでも弁護士登録できる状態にいながら、就職できずに1年間を就職浪人した人も、出始めている。司法修習を終了すればなれる資格が得られるのに、裁判官にも検察官にもならず、弁護士登録しない人も急増中だ。

 この問題で、弁護士と公認会計士に共通するのは、きちんとした需要予測も立てずに、闇雲に合格者を増加させた点であろう。就職難では優秀な人材は集まらないので、業界全体のレベルダウンにつながる。また、需要もないのに人数を増やして競争を激化させれば、現実には、アメリカで問題視されているように、職業倫理を重視し真の依頼者のためを考える専門家ではなく、儲けることに長けた専門家が生き残りがちだ。いずれも、最終的には国民のためにはならないだろう。

 一方、この問題で弁護士と公認会計士とで違うのは、公認会計士試験の方は直ちに見直し作業に入っているのに対し、新司法試験見直しは極めて動きが鈍いことだ。もう一点は、新司法試験の見直しと違い、公認会計士試験の見直しについて、マスコミが殆ど攻撃していないことだ。

 いずれの試験でも合格者を増加し多様な人材を専門家にしようとした点では同じであって、そうであれば、マスコミは公認会計士試験の見直しについても、新司法試験の合格者増見直しが提言されたときのように、大手新聞社全社が社説で攻撃しても良さそうなものだ。

 特に経済問題を中心に報道する日経新聞としては、是非批判すべきだろう。もともと増員が経済界の要望だったのだろうし、日経新聞も新聞の性質上、それを後押ししてきたはずだ。それにも関わらず、日経新聞が公認会計士試験見直しについて批判しないのは、公認会計士の濫造が決して経済界のためにならないことを(専門分野であるが故に)分かっているからではないのだろうか。

 新司法試験と公認会計士試験の見直し論議に関するマスコミ論調は、あまりにも温度差がありすぎる。

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