日弁連会長選挙の今後~その3

 選挙になると、ほぼ必ずと言って良いほど投票依頼の電話が弁護士のところにかかってくる。選挙権を持つ有権者が、29000人程度なので、有権者全員に電話での投票依頼が可能なのだ。

 大抵は、仕事中にかかってくる電話が多い。仕事の時間を外せば留守番電話になるかも知れないし、電話をかける側も、遅くなれば大変だからだ。しかも急ごしらえの選挙対策が多いようで、同じ候補を支持する側から何度も電話がかかってくることも希ではない。

 正直いって、選挙が大好きな人を除けば、迷惑きわまりないというのが電話をかけられる側の、本音ではないだろうか。 特に集中して書面を作っているときなどに、選挙の電話がかかってきて、集中が途切れ、書面作成にダメージを受けたりすると、腹立たしい思いは頂点に達する。

 電話をかける側だって大変だ。ちっとも知らない弁護士までも相手にして、お願いをしなければならない。そしてその役目は、若手に押しつけられることも多いようだ。

 また、大阪では、ある会派が某候補を推すと決めた際などには、忙しくて当日投票に行っていないと事務所に電話がかかってきて、早く投票に行くようにとせかされる場合もあると聞く。本来は投票の秘密があって、それは投票したか否かも秘密の範囲に含まれるはずだと思うが、会派の誰かがチェックをしていて、投票していない人間は丸わかりなのだ。そこまでチェックされて電話をかけられると、投票に行かないと会派を裏切っているような気にもなるだろうし、会派が推す候補に入れないと何となく気持ちが悪いし、うっかり筆が滑って反対候補者の名前を書くことも難しくなるのだろう。

 そもそも、電話で依頼されたから、会派が決めたから、○○候補に入れるというのは、おかしいだろう。電話をかけてもらって投票したからといって、その候補者が当選した暁になんらかの見返りが会派から期待できるわけでもないはずだ。なにより、A候補は電話で支持者が挨拶したから入れてやるが、B候補は電話で支持者が挨拶しないので生意気だから入れてやらない、というのでは、もはや選挙の意味が失われている。どちらが本当に日弁連にとって相応しいかという観点が、有権者から完全に欠落しているからだ。両方の候補者が、それぞれの政策を掲げて立候補しているのだから、 その政策のどちらに、より賛同できるかで判断するべきだ。

 確かに電話であれば、候補者の政策に疑問を問い質したりすることも可能であり、メリットはあるだろう。しかし、電話をかけたり・かけられたりで、選挙の度におびただしい無駄が弁護士会全体に生じているように思えてならないし、候補者の資力により差が出ることも否定できない。なにより投票に関する会派支配の温床とも言えるように思う。

 いっそのこと、電話での依頼を全廃し、ネットでの主張だけにしたらどうだろうか。そうすれば、候補者の資力によって左右されることもないし、質問や回答もできるしそれはインターネットに接続できる全ての人が見ることが可能となる。この双方向性と多くの人に一度に閲覧を可能とするというネットの特性を生かさないのはあまりにも、もったいない。

 そうかといって、現実問題としては、片方の候補者だけが電話依頼を廃止することはできないだろう。相手の候補者が全力で電話での投票依頼をしているのに自分だけその努力をしないことは当選に向けた努力をしないことにつながるからだ。

 だとすれば、日弁連の選挙規程を変更するしかないだろう。司法改革・司法改革と連呼するのも結構だが、その前に自分たちのやっている、古臭~いどぶ板選挙をまず改め、本当の会員の意見を吸い上げる必要があるように思えてならない。

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