映画「宇宙(そら)へ」

 マーキュリー計画・ジェミニ計画・そして有人月面着陸を成功させたアポロ計画から、現在のスペースシャトルまで、アメリカの宇宙計画をNASA秘蔵の貴重な映像で紹介する、ドキュメンタリー映画である。

 宇宙から見た地球のあまりにも圧倒的な美しさ、月面の神秘的映像、だけではない。

 人類最大のロケットであるサターン5型の打ち上げシーンは、是非劇場でご覧頂きたい。人類が僅かながら神に近づいたかもしれない、と勘違いしてもおかしくないほどの大迫力である。

 また、月面着陸直前にアポロ11号の着陸船のコンピューターがオーバーフローを起こし、自動操縦に頼れず、急遽手動操縦に切り替える際の緊迫したやりとりなど、映画を観ていることを忘れてしまうほどのリアリティである。

 そして、「幾多の尊い命が、その栄光を支えた」と映画のキャッチフレーズにも書かれているように、栄光の裏側に隠れがちな、無謀ともいえる挑戦、悲惨な事故、貴い犠牲についても目をつぶることなくこの映画は描いていく。

 初めて月に着陸したアポロ11号に搭載されていたコンピューターが、ファミコンレベルの計算能力しかなかったという話をどこかで耳にしたことがあったが、アポロ8号の月周回の計画は、生存帰還率50%以下であったことはこの映画で初めて知った。アポロ8号の宇宙飛行士達は、それを知っていたのだろうか、知っていたとしたら、どのような気持ちで月へと旅立っていったのだろうか。

 アポロ1号の火災事故、スペースシャトル「チャレンジャー号」の発射直後の爆発事故、同じく「コロンビア号」の地球帰還直前の大気圏突入時の空中分解事故、事故の映像だけではなく、地上スタッフの映像も織り込まれ、事故を現場で目撃しているかのように、この映画を観た者に迫る。

「打ち上げの中継を見ていた子供達に伝えたい。冒険や発見の過程では、こうした痛ましい事故がときに避けられないのです。しかし、これは終わりではない。希望は受け継がれます。未来は臆病な人々のものではなく、勇気ある人々のものです。」

 チャレンジャー号の事故の映像が流れ、観客が、何故人類はこのような犠牲を払ってまで宇宙を目指すのか、と心の中で自問し始めたときに流れる、レーガン大統領(当時)が語る言葉が胸に響く。

 ちなみに私が観たときは、公開1週間後でありしかも「20世紀少年~最終章」の公開初日でもあったため、私を含めて観客は5~6名しかいなかった。

 このまま公開が終了してしまうのがあまりにも惜しい映画である。この迫力は、絶対に映画館でなければ体験できない。

 機会があれば是非、映画館で鑑賞されることをお薦めします。

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