余計なお世話??~その6

⑤最後に、ACCJは東京以外における法曹の不足と諸外国との比較から、法曹の数を継続的に増加させなければならない。と主張するようです。

 ACCJは、「実際の事例を見ると、東京・大阪以外の都市及び道府県では弁護士の数は依然として不足している」と主張します。

 まず最初に、ACCJとしては「実際の事例」を把握して主張しているはずなのですから、「弁護士不足が根本原因で、東京・大阪以外の都市及び道府県において、○○に~~の不都合が生じており、その解消にどうしても必要であるから、弁護士は不足している。」と、具体的、論理的に論じて頂きたいと思います。どんな「実際の事例」を見たのかも明らかにせず、いきなり弁護士の数は不足していると断定するのは、単なる結論の押しつけではないでしょうか。

 ACCJは「実際の事例」を見たといいますが、本当に見たのでしょうか。見たのであれば、東京以外の都市及び道府県における実際の事例を示していただきたく思います。仮にACCJが東京・大阪以外で弁護士に依頼しようとしたときに困ったという事実があったとしても、根拠がそれだけの場合は、特殊な一部の事実だけで、どうして、一般的に弁護士が不足していると断言できるのか不思議です。仮にACCJが自らの体験だけで、東京・大阪以外は弁護士不足であると主張しているのであれば、沢山のアリが歩いているのを見つけ、一匹~二匹を捕まえてみたら偶然足が一本取れて5本だったので、ここを歩いているアリは新種で足が5本しかないアリである、と断定するようなものでしょう。

 また、何を根拠に弁護士数が不足だと断定したのでしょうか。

 弁護士が不足しているかどうかは、基本的には弁護士を利用する側から(場合により採用する側も考慮して)判断されるべき事柄でしょう。具体的には日本人・日本企業・日本在住の方の判断すべきことです。しかし、日本企業は(あれだけマスコミを通じて弁護士を増やせと言っていたのに)弁護士の採用を大幅に増やすことはしていません。司法統計を見ればわかりますが、一過性の過払い訴訟を除く民事事件の訴訟事件は明らかに減少傾向にあります。

 より分かりやすく言えば、2007年から2008年までの1年で弁護士数は約2000人増加しました。これは県単位で最も人数が少ない部類に属する島根・鳥取などの弁護士会の会員数が約50名ですから、その40倍です。1年で2000人増加するということは、今の大きさの島根県弁護士会が、毎年毎年、新しく40個ずつできていくのと同じです。

 新司法試験合格者が現状のままだとしても、毎年2000名近い弁護士が世に出てくることになります。当然この2000名の新人弁護士も弁護士として食っていかなければなりませんから、単純に計算すれば、島根県の弁護士全員が、1年間で処理している事件の40倍(つまり島根県全体の事件の40年分に相当するだけ)の事件の増加が毎年毎年必要になってきます。

 これから人口減少に向かう日本において、どう考えても、弁護士が必要になる事件が、それだけのペースで増加するとは思えません。

 そうなると、今までは事件にしていなかった案件について弁護士が、訴訟にした方が良いと勧めることがおきても不思議ではありません。これは、訴訟社会への第一歩です。

 また、仮に、東京・大阪以外の都市及び道府県において、数多くの地方の法律事務所が、あふれかえる事件を処理するために新人弁護士を競って採用しようとしているが、新人弁護士の数が圧倒的に不足して採用できずに困っている、などという事情があるのであれば、ACCJの言い分も理解できます。

 しかし、各地方弁護士会からこれ以上弁護士人口を増やしてどうするのだという意見が相次いでいるのです。実際に法律事務所に就職できない新人弁護士も相当数出てきています。この事実と、ACCJが根拠も実例も示さずに述べる「実際の事例」と、いずれがより真実に近いのかは明白だと思います。

 このような現状があるのに、どうしてACCJが「実際の事例を見ると、弁護士は不足している」と言い張るのか私には理解ができません。

(続く)

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