余計なお世話??~その4

 ACCJは、新規法曹の研修の機会は、a法律事務所がこれまで行ってきた研修、b国選弁護を利用した研修が可能であって、新規法曹の研修の機会の歪みは解消できるはずだと主張するようです。さらに、弁護士会は研修機会を提供する道徳的義務があると述べています。

 ACCJが知っているか知らないか不明ですが、aの研修は昔から各法律事務所で仕事を一緒にやらせるなどの方法で行われてきました。そのOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)が、新規法曹のあまりにも急激な増加により困難になってきているのが問題となっているのです。ACCJは、日本の4大事務所は100名を採用する予定であるなどと述べていますが、すでに大事務所でもリストラが開始されている事実(ある信頼すべき弁護士の方から伺った情報である)を把握しているのでしょうか。法律事務所に雇用されることもかなわず、全く実際の経験もなく独立を余儀なくされる新人弁護士がこれから続々誕生することを把握しているのでしょうか。

 それにも関わらず、ACCJが新人弁護士のOJTは可能だと主張することは、そもそも議論にすらなっていないように思います。例えて言えば歯医者さんに行って治療を受けたときに、あまりに痛いので「痛いです」と言ったら、歯医者さんに「痛くない!」と断言されるようなものでしょう。

 また、確かに理系出身者などが法曹を目指すきっかけとして法科大学院は当初は意味があったかもしれません。しかし、社会人入学者の割合がH16年度では48.4%であったところ、H20年度では29.8%、とほぼ半減に近い状況になりました。法学部以外の出身者の入学者数もH16年度では34.5%あったところ、H20年度では26.1%に減少しています。つまり法科大学院制度を続ければ続けるだけ、社会人・他学部出身者の割合が減少しつつあるのです。なにより、法科大学院を志願する志願者が、H16年度には72800人いたのが、H20年度では39555人であり、これまたほぼ半減に近い大幅な減少ぶりです。沢山の志願者が法科大学院に集まらなければ優秀な人材は確保できないし、優秀な人材が確保できなければどんなに教育を頑張っても、優秀な法曹を育てるには限界があることは当然でしょう。

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/houkoku/08100219/007/001.htm

 法科大学院制度(そして法曹の爆発的増加による魅力低下)により、他学部出身者が法曹を目指す意欲はどんどん削がれていると評価すべきではないでしょうか。現実に数字として上がっている事実(上記リンク参照)とACCJの主張は齟齬があるように思います。

 ACCJのbの主張は、私が日本語訳に頼っているせいか、申し訳ないがよく分かりません(誰か教えて下さい)。国選弁護を希望者だけではなく全ての弁護士(若しくは新規法曹?)に割り当てて、その過程で研修すればいいという意味なのかもしれません。もし新規法曹に割り当てて研修させろという趣旨だとすれば、少なくとも大阪弁護士会では既にその研修は行われています。

 大阪では新人弁護士が国選弁護を行う際には必ず、刑事弁護の経験を積んだ弁護士と一緒に事件を行わせるという研修を課し、その研修が終了しないと原則として国選弁護を行うことができない制度となっています。ACCJが言っていることくらいは、既に大分前からやっているのです。

 結局ACCJが、「新規法曹の研修についてはa・bの確かな方法がある」と大層に御主張されることくらいは、既に日本では行われていることばかりです。その中で、爆発的な弁護士人口の増加により、特に法曹として必要と思われる、aのOJTが極めて困難になりつつあるのが最大の問題なのだと思います。

(続く)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です