映画「ハゲタカ」

 日本そのものとすら言える、自動車産業の中心的存在アカマ自動車。「日本は宝の山だ、買いたたけ!」と狙いをつけた中国系ファンドが、赤いハゲタカと異名を取る劉一華(玉山哲二)を中心にアカマ自動車にTOB(株式公開買付)を仕掛けてくる。一見友好的な提案なのだが、アカマ自動車には中国政府系ファンドの狙いは読めない。

 一方かつて伝説のハゲタカとまで呼ばれた凄腕ファンドマネージャー鷲津(大森南朋)は、日本を見限り海外で生活をしていた。

 鷲津は、かつて敵対し、その後、協力したこともある、アカマ自動車執行役員の芝野(柴田恭兵)から、「アカマを救ってくれ」と要請を受けるが・・・・・・・・。

 「ハゲタカ」は、NHKで6回シリーズでドラマ化、放映された番組である。冷酷に患部を切り捨てていく手段を用いる鷲津と、旧態然としたしがらみに苦しみつつ日本的な経営を改善していくことで会社を蘇らせようとする芝野の対立構造が非常に見応えがあった。傑作ドラマであったといっても良いと思う。

 もちろん原作(真山仁著「ハゲタカ」)も非常に面白い。私は、関西学院大学法学部での講義の際に、敵対的買収に興味を持ってもらうために授業で、毎年、この本とドラマを紹介している。

 そのドラマの配役そのままに、映画化されたのが、映画版「ハゲタカ」である。まだ、映画をご覧になっていない方のために詳しい内容には触れないが、できればドラマをDVDで一度ご覧になってからの方が、詳しい背景、人間模様が分かるため、断然面白く見ることができると思う(最低でもNHKのHPでドラマ「ハゲタカ」のあらすじを確認された方が良いと思う)。

 また、多少なりとも敵対的買収に興味がある方にとっては、なお面白いかもしれない。私は、芝野が社内で敵対的買収対策チームに指示を出すところで、某敵対的買収対策本と全く同じ内容で、チーム編成を行い、指示を出していたことから、緊迫した場面でありながら、少し笑ってしまった。逆に言えばそれだけ迫真性に富んだ内容であったとも言えるだろう。

 いずれにしても、話の筋が分かりやすいので、経済に関する知識がなくても十分楽しめる。脇役の松田龍平・島田久作・志賀廣太郎もドラマ同様、非常に良い味を出している。

 お薦めの映画であることは間違いない。

6月6日より公開中

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