今日、少年鑑別所を出たのは、おそらく面会に来た人たちの中で最後だったのだ、と思う。既に携帯電話や荷物を入れておくロッカーの鍵は、私が使っているロッカー以外は全て未使用状態になっていたし、途中の一般の方の面会室にも誰もいなかった。
鑑別所の方に「お疲れ様です」と声をかけて、外に出ると、夕暮れが迫り、薄い三日月が光っていた。
少年は、一生懸命に反省に向けて努力している。真面目に反省して、事件の原因が自分のどこにあったのか探ろうとしている。突き詰めて考えていくからこそ、事件について自分で分からないところも出てくることがある。
当たり前だ。
私だって、自分の心の全てが、分かるはずもないのだから。
未成熟の少年が、事件当時の自分の気持ちを省みて、分からない部分があって当然である。
しかし、その分からない部分を質問されると、調査官や鑑別技官にうまく説明が出来ず、きちんと事件に向き合っているのか疑われてしまう場合もある。
出来るなら少年の心を真っ二つに割って、何が書いてあるのか知りたい。知ることができれば、もっと上手く、少年にヒントを出してあげられるかもしれない。
しかしそれはかなわぬ願いである。
付添人としてもっと出来ることはないかと思いつつ、現実に、悩むこともある。