論告・求刑と判決

 刑事裁判のお話しになりますが、「論告・求刑」という言葉をどこかで耳にされたことはあるかもしれません。

 刑事裁判の証拠取り調べが終わったあと、検察官が事実及び法律の適用について意見を陳述しなければならず(刑事訴訟法293条1項)、このことを「論告」といいます。実務上は、更に具体的な刑の量定についてまで意見を述べますが、これがいわゆる「求刑」というものです。

 求刑は、あくまで検察官の意見ですから、裁判官が検察官の求刑よりも重い刑を宣告してもなんら問題ありませんし、そのような場合も当然あります。

 ただ、実際には、検察側の求刑に対して、弁護側は軽い刑を求めて最終弁論を行いますから、検察側の求刑に対して2~3割ほど割り引いた刑が宣告されることが多いようです。あくまで真偽は不明ですが、求刑の6割以下の刑の宣告だと、検察官控訴の対象として検察庁で考慮されるという噂もあるようです。

 今日は、私の担当した、ある国選事件の判決がありました。追起訴が4件もあったこともあり、検察官の求刑は懲役5年でした。ところが、裁判官の判決は「懲役2年6月、未決勾留日数中90日をその刑に算入する」というものでした。

 「未決勾留日数の算入」は、 簡単に言うと、裁判で有罪となるまでの間、身柄を拘束されていた日数は自由を奪われていたわけですから、その身柄拘束を受けていた日数のうち幾ばくかを、もう刑を受けたことにしてあげようという制度です。裁定通算(裁判官の裁量で通算できるもの)と法定通算(法律上当然に通算しなければならないもの)があります。

 ちなみに、裁定通算は刑法21条、法定通算は刑訴法495条に規定があります。同じ未決勾留日数の算入に関して別々の法律に規定があるのも、少し面白いですね。

 さて、今回の私の担当した事件の場合、判決は懲役2年6月ですが、裁定通算で裁判長が未決勾留日数中90日を算入してくれました。したがって、被告人は2年6月-90日で、実際には求刑が懲役5年のところ、2年3月の間、懲役刑として刑務所に入らなくてはならないという判決が出されたことになります。

 残念ながら執行猶予とはいきませんでしたが、きちんと被告人が罪を償って、帰りを待つ家族のもとに戻り、きっと更生してくれると信じたいと思っています。

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