司法占領 鈴木仁志著

 2020年、近未来の日本。教育ローンで学費を借りながらも、ロースクールを優秀な成績で卒業した内藤は、誰もがうらやむ外資系ローファームに就職する。しかし、そこは、日本企業同士の契約ですら英文で作成され、契約の準拠法(基準にする法律)もニューヨーク州の法律を強引に使わせる世界だった。また、簡単な契約チェックにもタイムチャージを水増しして法外なフィーを取るなど、ビジネス(金儲け)としていかに法律業務を利用するかについて、内藤は、アメリカ流の手法を徹底して追求するよう求められる。素朴な正義感を持つ内藤は、正義よりも利益を追求するそのやり方に疑問を感じるのだが・・・・・・・。

 私は恥ずかしながらこの本のことを知らず、パートナーの久保弁護士に勧められて、初めて読みました。非常に面白い小説です。この本は2002年に出版された本ですが、かなりの部分で弁護士の世界・司法の世界の将来を言い当てるのではないかと思います。すでに、弁護士の就職難、ロースクール生の借金問題は、ある程度現実化してきています。

 既に、就職難の修習生が相当数発生しており、弁護士数は過剰となっています。何度も言いますが、弁護士の需要が本当にあるのであれば、どの事務所でも新人弁護士を雇いたくてたまらないはずです。それにも関わらず、就職がない修習生が多いということは、それだけで弁護士過剰の大きな証明なのです。

 欧米並みの法曹人口の必要性を主張される方は、正義よりも利益を追求する法律家が溢れる世界が、本当に望ましいとお考えなのでしょうか。生活に困った弁護士が、自分の法的知識を悪用して市民を食い物にする、そのような時代になる危険性は高まりつつあります。(既に韓国では、弁護士急増の結果、弁護士の反社会的行為が問題になりつつあるようです。)

 「弁護士数の急増に反対することは、弁護士業界のエゴである。」と根拠もなく主張される方々にこそ、是非お読みいただきたい小説です。

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