企業の弁護士ニーズ~その2~

 昨日ご紹介した、大阪大学の「法曹の新しい職域」研究会作成の「企業における弁護士ニーズに関する調査中間報告書」(2007年10月)に関する続きの記事です。

 各企業の経営者に対して行ったアンケートの自由記載欄に、面白い記述が多かったので、印象に残っている部分を抜粋させていただきます(部分的抜粋もあります)。

~以下、 アンケート自由記載欄の抜粋~

・最終の合格率の低下など質の低下が心配です。

・このままいくと一発狙いの連中も増えることでしょう(アメリカ型ヤクザ弁護士のように)。やはり制度はさておき、日本の争いを好まないという美風を尊重するに、町医者、保険の先生、産業医→医局→先端研究という専門化が必要であろう。オールラウンダー弁護士の時代は少なくとも都会では終わっているでしょう。刑事をしても食べていけるようにするとか、行政で食べていけるように受け皿作りも必要でしょう。今のままでは粗製濫造が予想されるでしょうなぁ。せっかく法科大はそのリスクを減らせるのに・・・・。まずは法科大の質と数でしょう。

・弁護士が多くなると仕事を作るために、ことさら事件化して社会がぎすぎすしてくるように思える。日本人の良い習慣である話し合いがなくなり、全て訴訟によらなければ解決しない社会になるような気がします。

・人間性をしっかりと教育して欲しい。信頼できる人材、社会から尊敬される弁護士を育ててもらいたい。粗製濫造では却ってマイナスの社会になるような気がします。「弁護士栄えて社会は滅ぶ」にならないよう、強く望む。

・法律についてしっかりと教育することについてはまったく異論はないが、そもそも弁護士を大量生産することはなんら国益とならず、むしろ不要な訴訟を増加させ、国力を低下させることにつながると危惧する。実質価値を生み出すことのない職種従事者を増加させることに全く国家ビジョン・戦略を感じない。弁護士サービスが使いやすくなるとか社内活用できるというような安易な問題ではないと思う。

~抜粋ここまで~

 自由記載欄について、大阪大学大学院法学研究科の渡邊特任研究員は、次のように分析しておられます。

「自由回答欄の内容を見ると、弁護士の増加が過度の訴訟増加を招いてしまうことへの危惧や、弁護士の増加が質の低下につながらないかという危惧など、将来への不安が示されていました。また、事業分野に関する専門知識をもった弁護士へのニーズや、分かりやすい料金体系へのニーズも示されています。」

 このアンケート自由記載欄を見ると、「企業の経営者は、弁護士増員さえすればいいと脳天気に考えている訳ではない。」、ということがよく分かります。

 ・・・・・ということは、「弁護士増員は国民や企業の要請である。」と根拠もなく言い続けている法科大学院やマスコミの主張が本当に正しいのか疑問に思えてきますね。

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