電車の窓

 先日、私が通勤に使っている京阪電車を利用して帰宅しようとしていた際、走行中のK特急の車内灯が突然減灯され車内が暗くなってしまいました。

 車内放送によると、電車の発電機が故障したためだということでした。車内灯は復旧できるが、エアコンはすぐには復旧できないとのことで、窓を開けて下さいという指示が車掌さんからありました。幸い、たまたま、京阪電車の特急型車両の中でも旧型車両であり、殆どの窓が開けられるタイプのものでしたので、助かりました。

 確かにエアコンに比べると、温度を下げることができないため、少し汗ばむような状況でしたが、外からの風が相当入ってくるので、耐えられないような暑さにはなりませんでした。

 むしろ、風によって感じられる涼しさが心地よく、また風の音、車外の音が良く聞こえるので、とても懐かしく思われました。

 私の育った町は、紀勢本線が通っており、電化されたのは確か私が小学校6年生の頃でした。電車が走るまでは、当然汽車(気動車)が走っていましたから、小さい頃から鉄道車両を、いつも汽車と呼んでいました。さすがに最近は間違えなくなりましたが、大学時代でも、つい汽車と言ってしまったことを覚えています。

 電化された後でも、紀勢本線には古い客車が利用されていたこともあり、まるで松本零士さんの「銀河鉄道999」に出てくるような客車(直角背もたれの奴ですね)で、高校から帰宅することも良くありました。

 ドアも手動で、一番後部の車両からは、飛び降りようとすれば簡単に飛び降りることもできました。古い客車ですから、当然冷房もなく、夏は窓を全開にして風を取り入れ、扇風機を回すくらいしか涼をとる手段はありませんでした。大きな扇風機が天井に一列に並んで取り付けられており、それぞれが円を描きながら好き勝手に首を振り続け、その風が網棚の網(本当に糸を編んだ網を網棚に使っていました。)を時々揺らす光景を、何故だか鮮明に覚えています。

 おそらく乗客の方の多くは、エアコン完備の電車しか乗ったことがないでしょうから、特急電車で走行中に窓を開けるということは、とても新鮮な体験だったと思います。

 私としては、新鮮な体験と言うよりは、柔らかい涼しさにつつまれまがら、列車通学をしていた高校時代を少し思い出させてもらうことができ、得した気分で電車を降りることになりました。

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