ガリレオの思考実験

 ずいぶん昔の話になりますが、多分NHK特集で、ガリレオの思考実験のことを取り上げていた記憶があります。

 当時、重いものは軽いものより早く落ちると思われていたところ、ガリレオが落体の法則を思考実験で発見し、ピサの斜塔から実際の実験を行ったという話だったように思います(記憶違いならすみません)。

 その思考実験とは、確か次のようなものでした。

 重いものと軽いものが落ちる速度については、①重いものが早く落ちる、②軽いものが早く落ちる、③落ちる速度は変わらない、の3通りしかない。

 そのうえで、重いものAが軽いものBより早く落ちるとすると、AとBを長さのあるヒモで結んだ場合、Aは早く落ちようとするけれども、Aより遅く落ちようとするBに引っ張られて、A単体で落とすよりも遅く落ちるはずである。そのヒモをどんどん短くしていっても、その状態は変わらない。そうであれば、AとBをヒモで結んで密着させた場合でも、Aは結びつけられたBがAより遅く落ちようとする以上、A単体で落とすよりも遅く落ちるはずである。

 ところが、よく見てみると、AとBが密着した状態というのは、A+Bの重さの物体と同じである。そうだとすると、AとBがヒモで密着させられた物体は、A単体より重いのだからA単体で落とすよりも早く落ちなければならないはずである。

 明らかに矛盾が生じる。

逆に軽いものが早く落ちると考えても、同じような実験で矛盾が生じる。

 この矛盾が生じる理由は、重いもの乃至軽いものが早く落ちるという前提が誤っているからである。だから重いものも軽いものも落ちる速度は同じである。

 以上のようなものでした。

 非常に明快ですっきりとしており、感動した覚えがあります。法律の世界では、ここまで明快に割り切れることは少なく、事実の争いや法律の解釈などで泥沼にはまることもあります。ときおり、ガリレオの思考実験のように明快で反論の余地のない主張をしてみたいものだと思いますが、そう簡単にはいかないようです。

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