ザ・マジックアワー

 6月7日に公開された、三谷幸喜監督最新作の映画です。とりあえずご覧になって下さい。

 もともと私は、主演の佐藤浩市さんのファンですが、そんなことを抜きにしても十二分に面白い映画に仕上がっています。笑えます。少し幸せと元気をもらえます。そんな映画です。

 映画は皆さんに見て頂くとして、先日の土曜日の深夜、撮影の終わったザ・マジックアワーの映画セットを案内するという番組をやっていました。案内役は、三谷監督御自身です。最初は、公開してからも宣伝活動とは、監督って大変なんだ、とちょっと冷めた目で見てましたが、それは間違いでした。

 三谷監督は、 ときには階段を駆け上がり、ときには道路に寝そべりながら、セットを案内していきます。その監督の様子がとても良いのです。本当に心の底から、自分の作り上げた映画がいとおしくてたまらない様子です。そして彼にとっては、おそらく、その映画を産み出す舞台となった、大がかりなセットも完成した映画と同じくらい、いとおしく思えたのでしょう。できれば、映画の中だけの街ではなく、ずっとそのままにしておきたかった街のはずです。

 しかし、映画のスタジオとは、次の映画を産み出すために、今あるセットは壊され、次のセットが作られなければならない場所でもあります。セットを使って作られた映画は残り、人々を感動させ続けますが、セットは残り続けることはできません。

 監督自身も、残念だったのでしょう。冗談めかして、このまま置いておきたいといったけど、ここのスタジオの人には早くどけてもらいたいと言われた、という内容の発言をされていました。

 セットの細かな部分まで、一生懸命に説明する三谷監督の姿から想像するに、三谷監督自身、何らかの形でセットとお別れをする儀式をしなければ踏ん切りがつけられないくらいのお気持ちだったのではないでしょうか。そのお別れの儀式を、セットを解説するという番組に仮託して、三谷監督は行っていたのではないかと私には思えます。

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