今朝の出来事

 今朝事務所に向かう途中、大阪市役所の近くの交差点で信号待ちをしているときに、視界の端に動くものがありました。

 何だろうと思ってよく見ると、障害者の方用の黄色い、信号押しボタン装置の上に、一冊の文庫本が載っていたのです。カバーはすでにありません。背表紙が日に焼けているところからすると結構古そうです。自動車が近くを通り過ぎるたびに、自分の存在を訴えるかのように表紙と何枚かのページが踊ります。

 よく手袋やハンカチなどの落とし物を拾った方が、目立つようにと置いておくことはありそうな場所ですが、文庫本は初めて見ました。

 あまりにミスマッチな気がしたせいか、なんだか文庫本付近だけが音のない世界にあって、音のない世界でページがめくられ、また音もなく元に戻ることを繰り返しているような不思議な感じを受けました。

 何故だか、梶井基次郎の「檸檬」を、久しぶりに読みたいと思いました。

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