センスを感じたTVCM

 何年か前の、JT(日本たばこ)のテレビCMに素晴らしい出来映えのものがありました。

 確か、田舎の古い家屋の軒下で、喪服を着た、老婆と豊川悦司が立っている。雨が降りしきる中、老婆が豊川悦司のたばこにそっと火をつけてあげる。というCMです。

 音楽はたぶん流れておらず、降りしきる雨の音と豊川悦司が最後に一言、「さよなら」という台詞をいうだけだったと思います。

 しかし、わずかそれだけのCMであるにも関わらず、様々なことを想像させてくれるCMでした。二人の喪服は誰のためのものなのか、二人の関係はどのようなものなのか、「さよなら」というトヨエツの台詞は何に又は誰に対する「さよなら」なのか。なぜトヨエツはたばこを吸わなければならない心境になったのか。またそれを察して火をつけてあげる老婆の思いと彼女の人生はどうだったのか・・・・・。

 「さよなら」という言葉しか出てこないのに、見ていた人それぞれに、きっとこんな状況なんだろうなと自然に物語をつくらせてしまう、そしてその物語はおそらく悲しいけれど決して未来を否定するものではない物語になるだろうと思わせる、そんな美しいCMでした。

 最近のテレビCMは、うるさいBGMと商品の一方的な押しつけが多いのですが、ほとんど印象に残りません。わずかな時間で印象を与えるためには、押しつけるのではなく、相手に自ら想像する余裕や時間を与えるほうが有効なのかもしれません。

京都大学中森ゼミ同窓会?

 先日、私の恩師である中森先生の刑法ゼミ同窓生で集まる会が開かれました。

 中森先生の研究室に集合して、中森先生に卒業後20年近く経過した京大を案内して頂き、その後懇親会を行うというものでした。中森先生は、京大の法科大学院の初代学院長をおつとめになっただけではなく、副学長・理事として京大全体の運営にも関わっておられます。中森先生は当時の出席簿や名簿、ゼミのレポートまで保管しておられ、驚きました。

 京都大学は、ずいぶんお洒落に変わっていました。私が入試を受けた時計台下の法経一番教室がなくなっていたり、司法試験短答式試験を受験していた教養部の建物がすっかり変わっていたりして、なんだか寂しい気がしましたが、これも時代の流れなのでしょう。テレビドラマ「ガリレオ」の影響からか、修学旅行中らしい女子高生が時計台の写真を写しており、私の学生時代ではとても考えられない光景でしたので印象的でした。

 私を含め、5名が中森先生の京大案内ツアーに参加でき、懇親会には後2名が参加して先生を含めて合計8名で旧交を温めることができました。中森先生をはじめ、ゼミ生だった皆さんも殆ど変わっておられず、また当然、皆さんの性格も以前と変わっていないものですから、すぐに以前のゼミのような雰囲気に戻れました。20年近くもの時を一瞬にして、巻き戻したかのような時間でした。とても楽しい時間を過ごせたと思います。

 私はあまり優秀な学生ではなかったのですが、そのような卒業生に対しても、「そんなん、君、〇〇やないか」と言葉ではばっさり切り捨てながらも、暖かく接して下さる中森先生は、本当に優しいよね、と参加者一同で話していた次第です。