反対の理由

 去る12月6日、日弁連臨時総会にて、新人弁護士の弁護士会費(一般会費)を半額にする議案が、可決されました。

 一見、新人弁護士に優しい議案であり、賛成すべきと思われるかもしれませんが、私は反対しました。

 詳しくは10月5日の私のブログに書いてありますが、もう一度繰り返して説明します。

 まず私たちの登録時には、このような議案は全ての弁護士にとって全く考えもつかない議案だったと思います。新人弁護士が登録したてであれ、弁護士会費を支払うことが困難なほど経済的に悪条件にさらされること自体が考えられなかったからです。

 ところが、現在の新人弁護士はこれまでの新人弁護士よりも悪い条件でしか雇用してもらえず、最悪の場合は就職先すら見つからず、いきなり自宅で独立しなければならない弁護士も出現しています。だからこそ、異様に高い弁護士会費を負担させると酷であるという話が出てきたはずです。単に、新人であまり仕事がないだろうからという理由だけなら、私たちの登録時も全く同じ状況であり、私たちの登録時に弁護士会費軽減の議題がでてもおかしくなかったはずです。

 結局、現在の新人弁護士の雇用待遇の悪化が最大の原因ということになります。

 では、なぜ、新人弁護士の雇用待遇が悪化したのかというと、それだけの弁護士需要がないからです。弁護士が不足してたまらない状況であれば、どこの事務所でも高い給与を払ってでも新人弁護士を確保しようとするでしょう。しかし現実は、そこまでの弁護士需要はないから、新人弁護士の雇用待遇は悪化しているのです。知人に聞いた話によれば、東京の町弁事務所では、新人弁護士は特に不要だけど年俸300~400万円程度であれば、雇ってもかまわないというところも相当数あるそうです。

 弁護士需要がないのに、弁護士数の増加を全く止めようとしない日弁連執行部は、もはや自分で考える力を失った状態にあるとしか思えません。確かに現執行部は、年間3000人の構想を否定すると自分たちが導入した構想が過ちであったと認めることになります。しかし、新人弁護士・若手弁護士の待遇悪化から明らかなように、年間3000人構想自体が誤っていたのです。過ちがあれば素直に認め、直ちに正しい道を探すことこそが、執行部に求められる力量のはずです。

 確かに、仮にそのままごり押ししても、日弁連執行部の弁護士連中は問題ないでしょう。なぜなら、彼らはそれまで十分稼いできたうえ、あと10年も弁護士を継続する人間はわずかだと思われるからです。つまり、弁護士数が激増して大問題となったときには既に楽隠居して、関係がない立場にいるからです。

 しかし、私たち若手(少なくとも私)からみれば、これまで十分儲けてきた年寄り弁護士たちが、自分たちの失敗を認めたくないという理由だけで、早期に手術すれば助かるかもしれない癌患者に胃腸薬を与え続けているとしか思えません。

 早く手を打たないと、弁護士の待遇が異常に悪化する→優秀な人が弁護士を目指さなくなる→弁護士の全体の質が下がる→弁護士を社会の人が信用しなくなる→国民が司法による解決を望まなくなり司法を信頼しなくなる→仕事がなくなる弁護士が更に増え、益々弁護士の待遇が悪化する→(最初に戻る)、というスパイラルが形成されてしまうでしょう。

 そのとき、日弁連執行部は責任を取ってくれるのでしょうか?

 私達の質問にすらまともな回答をよこさない日弁連会長を含む日弁連執行部が、責任を取ってくれるとは到底思えません。

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