広隆寺 弥勒菩薩半跏思惟像

 国宝第1号としても有名な、広隆寺の弥勒像です。私はこの弥勒様が大好きです。同じくらい好きな仏像に奈良興福寺の阿修羅像がありますが、それについては、いずれ触れたいと思います。

 弥勒菩薩とは一般には、釈迦入滅後56億7千万年のちに現れ、衆生を救うといわれています。

 私は、大学時代に京都にいましたので、時々お寺をまわっては仏像を見ることもありました。その際に、広隆寺で弥勒菩薩像を見たのですが、他の仏像とは何か異なる印象をうけました。

 上手くは言えないのですが、おそらく長い年月信仰の対象とされてきた仏像には、それぞれに信心を捧げた人の思いのようなものがこもっているように感じられることが殆どです。それまで見てきた、仏像はいずれも多くの人の思いがこもっていて、祈りを捧げた人たちが仏像に込めた何らかの力が、仏像から放たれているような感じを受けることが多いのです。

 ところが、広隆寺の弥勒菩薩は、私にはそう感じられませんでした。あくまで優しく、市井の人々のあらゆる思いを、ただひたすらに静かに受け止めているように思えました。

 例えとしては不適切かもしれませんが、人間が誰も足を踏み入れることができず、目にすることも叶わない深い山奥に、澄んだ水をたたえた小さな湖があり、何かを放り込んでも決して水面が乱れることもなく、水も濁らず、また音を立てることもなく、すっとその中にしまい込んでしまうような感じを持っている、といえば多少は私の感じた弥勒菩薩の印象に近いでしょうか。

 もちろん、私の印象に過ぎませんから、きっと違った感じを受ける方も多いでしょう。ただ、あまりにも素晴らしい仏像なので、京都観光の際には必見の仏像の一つであることは間違いないと思います。京都太秦に行かれる際には、映画村も良いですが、是非広隆寺の弥勒様にお会いされることをお勧めします。

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