税金のお話

 日本の国家財政が危機的状況にあるということで、消費税率のアップが検討されていることは皆さんご存じだと思います。

 消費税アップになると、所得の低い方に逆進的に負担が重くなるとして、反対する声も出ていますが、どのような課税方法が公平かという点については、いろいろ議論があります。

 例えば次のような例ではどの方式が一番公平だと思われるでしょうか。

①映画館に入場する際に、1人あたり決まった入場料を支払うだけにする方式。ただし、一度支払えば、その映画館で上映されているどの映画を見ようと、何度映画を見ようとも料金は同じである。

②映画館に入場する際にお金を取らず、映画館で上映されている映画を見るごとに料金を支払ってもらう方式。ただし、映画ごとに料金が異なる場合もあるし、一度見た映画をもう一度見る際にも再度料金がかかる。

③映画館に入場する際に、生活費以外のお金を全て支払ってもらう方式。ただし、一度料金を支払えば、その映画館で上映されているどの映画を見ようと、何度映画を見ようとも、それ以上のお金はかからない。なお、生活費すら不足している人はただで映画を見ることができる。

 おそらく、大多数の方は、③は論外だな、①の方式が映画をたくさん見られて良いけれど、多分映画館の入場料が高くなるだろうから、②が一番公平だと思われるのではないでしょうか。

 確かに、③の方式では、生活費が残るという点では公平です。しかし、生活費のない人はただで映画を見られるかも知れませんが、一生懸命に働いてたくさんお金を持っていた人が、生活費を除いてお金を全部持って行かれたら、たまったものではありません。頑張って働いて儲けても、持って行かれてしまうのであれば、働かずに生活費もない状態で映画館に行って映画を見た方が得だということになりかねません。これでは公平と言えないと思うのが人情でしょう。

 これに対し、①の方式では、入場料が全く一緒という点では公平です。しかし、映画館で多数の映画を上映するためには費用がかかり、それを1回の入場料でまかなうわけですから、映画1本だけを見るよりは入場料は間違いなく高くなるでしょう。映画を1本しか見ない人が、何本も見る人の分まで負担するのは、損した気がする(公平ではないと考える)のが人情でしょう。

 それに比べて②は公平に思えます。

 なぜなら、使用に応じて負担するからです。何度も映画を見たい人は何度もお金を払ってみればいいわけですし、見たくない人はお金を使わなくてすみます。

  では、①~③を税金に変えて考えてみたらどうなるでしょうか(上記の例を完全に税制に当てはめることは出来ませんが、あくまでわかりやすさのために対比させています)。

 ①は、例えば、「日本に住んでいる成人は、日本という国を維持していくために必要な金銭を平等に負担する意味で収入に関係なく年間500万円税金を納めなさい。」という人頭税税制に近いでしょう。

 ②は、消費に応じて税金を支払うものですから、例えば「消費税率5%」という現在の消費税制に近い制度と言えるでしょう。

 ③は、現在の所得税の累進課税方式に近い税制でしょう。所得の多い人から多めに徴収して、所得の低い人に分配していく制度です。

 不思議なことに、今度は何となく③が公平に思えますね。 税金に関する公平とはこのように非常に難しいもので、各国の考え方によっても異なります。一概に消費税=悪とは言い切れない面もあるのです。

 ただ、政府が税金無駄遣いの対策もせずに、消費税率アップを言いだしても、納税者側からは納得できないものがあることは言うまでもありません。まず、とことん経費削減を行った上で、なお国家を維持するために税収が不足することについて政府にきちんと説明して納得させてもらうことが先決でしょう。

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