1000敗の重み

 私は将棋はヘボですが、棋戦の観戦記事は好きで結構、読んでいます。プロの将棋の内容は理解できないのですが、天才中の天才といわれる棋士達の、対戦している際の息づかい、駆け引き、人物像などが非常に興味深く思われるからです。

 プロ野球観戦が趣味として認められるのであれば、プロ棋戦(将棋のプロである棋士の勝負)観戦記事を読むのが私の趣味の一つとも言えるかもしれません。

 ところで、先日、加藤一二三(かとうひふみ)九段が史上初めて公式戦通算1000敗を記録したという記事を見ました。

 1000回も負けたのだから、弱い棋士ではないかと一般の方は思われるかもしれませんが、全く違います。まず将棋の対局公式戦は、トーナメント形式で上位者を絞り、最終的に優勝者を決定することが多く、必然的に強い棋士ほど、たくさん公式戦を戦うことになります。

 甲子園に出ても1回戦で負けたチームは、1回しか試合が出来ません。しかし、勝ち残れば2回戦、3回戦と試合の数が増えていきます。これと同じ理屈で、1000回負ける程たくさんの公式戦をこなしたということは、超一流の実力者でなければ不可能なことなのです。

 また、将棋の世界では、棋士は対局に負けたと悟ったとき、自ら負けたと認め、相手に対して頭を下げなければなりません(「投了」と言います)。これほどの大天才棋士が、天才同士の戦いにおいて、1000回自らの負けを悟り、相手に頭を下げ、またそこから立ち上がって勝負の世界で戦い続けてきたという重みは、計り知れないものがあると思います。

 ただ、加藤九段の名誉のために申し添えますが、加藤九段は1261回、他の将棋の天才達に頭を下げさせてきております(1261勝をあげています)。 現在も順位戦B2組で勝ち越しており、今後も、将棋界の重鎮として、更にご活躍されることでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です