「白い恋人」事件と内部告発

 北海道銘菓「白い恋人」が、賞味期限の改ざんをしていた事件が大きく報道されています。私も好きなお菓子だっただけに残念です。

 新聞報道によりますと、製造販売会社の石屋製菓の社長了承の元、賞味期限の改ざんが行われ、会社ホームページ宛に今年6月下旬には賞味期限改ざんについての通報メールが、7月には大腸菌群顕出についての通報メールが届いていたが、担当の統括部長が握りつぶしてしまったようです。その後、保健所宛に匿名の内部告発があり、保健所の立入り調査が行われ、事態が発覚したようです。

 会社法や金融商品取引法が、会社に対して内部統制システムの整備を要求しているにもかかわらず、今回の事件は起きてしまいました。それは何故でしょうか。

 まず、本件の賞味期限の改ざんについては、経営トップの社長も了承していたと新聞で報道されておりますので、もしその報道が事実であれば、経営のトップが故意に不正行為に関与したことになります。内部統制システムといっても、経営者の命令を正確に実行するシステムの一環ですし、経営者によって設置されるものですから、経営者自身が内部統制システムを無視しようとすれば、無視することは可能なのです。

 これと同じく、経営者が故意に不正に関与して問題になった事件としては、三菱自動車リコール隠し事件、西武鉄道株事件、カネボウ粉飾決算事件、東横イン不正改造事件などが記憶に新しいところでしょう。

 しかし、本来内部統制システムは、会社業務適正のために必要なシステムですから、経営者であっても簡単に乗り越えられるような内容では不十分というべきです。企業内に経営者にストップをかけられる力を持ち、しかもそのための情報収まで可能とする組織が必要でしょう。また、会社全体として様々な監視システムが作成されていれば、簡単にシステムをかいくぐることは難しくなると思います。

 この点、非常に惜しまれるのが、おそらく内部者と思われる方が会社のホームページ宛に不祥事を伝えていたにもかかわらず、担当の統括部長が握りつぶしてしまった点です。もし、握りつぶさずに自ら不祥事を公表して消費者に謝罪し、製品の回収を行っていれば、今回ほど会社の信用を害することはなかったはずです。

 おそらく、会社のホームページ宛に通報した方も、まず会社で適切な対応を取ることを求めていたのでしょう。ところが会社が何の手だてもうたないので、しびれを切らして保健所に匿名で告発することになったものと思われます。このように内部通報が功を奏さず、内部告発になった場合、一度は会社に情報がもたらされているのですからそれを無視したということで、更に会社には大きなダメージが与えられてしまいます。

 この点から、分かることは、内部統制システムの一環として会社内部に通報窓口を設置する必要があるのは当然ですが、それとは別系統で内部の情報を通報する窓口を設置する必要性です。仮に、内部通報窓口を独立して設置していれば、その窓口から社長乃至取締役・監査役・顧問弁護士などに直接情報が伝達されることは可能でした。

 このような内部通報窓口を独立して設置する会社は次第に増加しているようです。ただし、通報窓口を専門に行う会社は、守秘義務の点や、対応すべき法的意見を出せない点で、不十分かも知れません。また顧問弁護士では、通報者がどうせ会社の味方の弁護士だろうと思って通報を躊躇する場合も考えられます。当事務所では、従来から内部統制について研究・セミナー開催等を行い、そのような要望に応えたスキームを用意しております。ご興味をお持ちの方はお気軽にお問い合わせ下さい。

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