「モモ」  ミヒャエル・エンデ著

 知らない間にどこからかやって来た不思議な少女「モモ」。モモに話を聞いてもらうだけで町の人は救われた気分になり、モモと一緒に遊ぶだけで子供達はとても面白い遊びをいくらでも思いつくことができた。ところが、時間貯蓄銀行の外交員を名乗る灰色の男達が現れる。彼らは人間の時間を奪う「時間泥棒」だった。時間泥棒に時間を盗まれた人々は時間に追われるようになってしまう。モモは、盗まれた時間を人々のために取り戻せるのか。

 時をテーマにした児童文学のもう一つの傑作として紹介したいのが、「モモ」です。非常に有名なお話なので、ご存じの方も多いでしょう。

 何事にもスピードが要求される現代社会で、豊かな時間を過ごすこと、自分らしく時間を過ごすことは、ともに非常に難しくなっています。
 作者のエンデは、時間泥棒に時間を盗まれた世界を描くことで、実にうまく現代社会の状況を物語に変えて、私たちに提示してくれます。しかも、時間泥棒を生み出すのを助けたのは人間自身なのです。

 そして、時間の国で人間の時間を司っているマイスターホラに次のように語らせるのです。

 「人間は、ひとりひとりがそれぞれじぶんの時間をもっている。そしてこの時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ生きた時間でいられるのだよ。」
 「光を見るために目があり、音を聞くために耳があるのとおなじに、人間には時間を感じとるために心というものがある。もしその心が時間を感じとらないようなときには、その時間はないもおなじだ。」

 もう、私たちは、物語に変えて示してもらわなければ、気づけないほど、時間泥棒に時間を盗まれてしまっているのかも知れません。

 どうも仕事に追われ過ぎているようにお感じの方は、お盆休みがとれるのであれば、ご一読されることをお勧めします。ちょっと夜空の星でも眺めようという気持ちになれるかも知れません。

 ちなみに、8月13日にはペルセウス座流星群が極大日を迎えます。晴れていれば、たくさんの流れ星が観察できると思います。以前見たときは、少し尾を引く美しい流星が多かったと思います。

岩波少年文庫800円(税別)

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