不公平だった司法試験

不公平だった司法試験

あなた方は現役受験生だから5人に1人合格させます。あなた方は浪人だから10人に1人しか合格させません。

 こんなことが同じ大学の同じ学部の入学試験でおこったら、ものすごい非難が巻き起こるでしょう。明らかに不公平だからです。

 しかし、これと似たようなことが、こともあろうに司法試験でかつてありました。ご存じの方も多いでしょうが、いわゆる丙案問題です。当時の司法試験は5月の第2日曜日に行われるマークシート方式の短答式試験で約5~6に1人に絞られ、残った受験生が7月下旬の論文式試験でさらに6~7人に1人に絞られ、残った受験生が最後に10月中旬に行われる口述試験を受験できました。口述試験はほぼ95%は合格するので、論文式試験が司法試験の天王山といわれていたのです。

 ところが、当時合格者を長年絞ってきたため、実力のある者でもなかなか合格できない状況が続き、合格者の高年齢化が指摘されていました。また検察官任官希望者も少ないという問題も生じていました。そこで、受験回数の制限などの提案もあったのですが、結局、論文式試験において、合格者は、上位7分の5までは成績通りに合格させるが、残り7分の2については、受験回数3回以下の者しか合格させないという制度に変更されたのです。その結果、成績順で501番の者が合格できず、受験回数が3回以下というだけで成績順で千数百番の者が合格する可能性が生じたのです。当時の論文式受験者数は約5000人で、合格者730人程度でしたから、受験回数の多い人は520番程度の成績を取らなければ合格できませんでした。したがって合格率約10倍です。10人に1人しか合格できません。これに対し、優先枠を持つ受験回数3回以下の受験生は、控えめに見積もって1000番で合格できたとして、合格率約5倍です。5人に1人が合格できたことになります。

 最初に導入された平成8年度の論文試験で、法務省は優先枠を持った受験回数3回以下の者とそうでない合格者の点数差はわずか数点であったと発表していように記憶しますが、司法試験の論文式試験は0.01点刻みで点数がつけられると聞いていますので、もしそれがほんとうであれば、仮に3点の差であっても実際には300段階の差が生じていたということになりそうです。

 その後、合格優先枠は9分の2に減少し、さらに11分の2に減少した上、ついに廃止されたはずです。それでも、その間に論文試験の点数では合格者より上でありながら、ただ、受験回数が多かったというだけで合格させてもらえなかった受験生が数多くいるのです。

 1年にたった一回しかない司法試験に向けて必死に努力をし、精神的にもボロボロになりながら受験生活を続け、ようやく論文式試験で獲得した成績が、受験回数が多いというだけで、より点数の低い者に負けてしまう。こんな不公平があって良いものでしょうか。すでに廃止されたとはいえ、司法試験において、かつてこのような不公平がまかり通っていたこと自体、大きな汚点であると思えてなりません。

 新司法試験は終わったようですが、旧司法試験の方はもうすぐ論文試験ですね。受験生の皆さんは、暑さに負けず、もうひとがんばりしてみて下さい。

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