弁護士増員で司法過疎は解消できるのか~1

 現在、日弁連で法曹人口検証本部が立ち上げられ、法曹人口(といってもメインは弁護士人口)が過大かどうか検証するということをやっている。

 私を委員に選んで頂ければ、いいたいことは山ほどあったのだが、残念ながらお声かけ頂けなかった。

 さて、伝聞であり間違っていたら申し訳ないのだが、その検証本部で、いわゆるゼロワン地域(地方裁判所の支部が管轄する地域区分内に、法律事務所などを置く弁護士の数が、全くいない又は1人しかいない地域。ちなみに 日本国内には地方裁判所およびその支部が203ある。)が未だ解消されていないとして、弁護士人口をもっと増やすべきだとの主張が執行部側からあるようだとの噂を耳にした。

 実際には、0地区はもはや解消されており、ワン地区も一度は解消され、2020年4月時点で僅か2カ所かのワン地区があるだけのようだが、未だ執行部側はワン地区の存在を理由に弁護士人口は過大ではないと主張したいのかもしれない。

 上記の推測が仮に当たっているとしての話だが、弁護士過疎は弁護士増員で解消できるものではないと私は考えている。

 理由は簡単だ。

 弁護士は、公務員でも会社員でもなく、自営業者だからだ。

 当たり前だが、自営業者は自らの商売で稼いだお金で生活をしなくてはならず、ある日、たまたま自分が担当している仕事がなくても他の日にしっかりやっていれば月給をくれることもないし、体調を崩して休業しても誰かが休業手当をくれるわけではない。

 したがって、きちんと仕事があって収入が上げられる可能性がある場所でしか開業できないのである。

 司法過疎地と呼ばれる地域は、過疎化が進行し産業も低調で、法的紛争も多くはないところが多い。そのようなところで開業しろと言われても、生計が成り立たないからそもそも不可能なのだ。

 そもそも、あれだけ訴訟大国であり、100万人以上の弁護士がいるとされるアメリカでも司法過疎は解消されていないとの報告もなされている。

 また、国民の皆様がどれだけ真剣に弁護士を必要としているのかもはっきりしない。

 マスコミやら日弁連は、やたら地方の弁護士不足を大声で喧伝するが、本当に弁護士過疎地域の方が心の底から弁護士が来ることを切望しているのだろうか。死活問題として弁護士を求めているというのではなく、「近くにいたら便利」程度の希望なのではないだろうか。

 例えば、無医村が高給を出してでも医師を募集している事例はよく耳にするところだが、弁護士ゼロワン地区の住民や自治体が高給を出して弁護士を誘致する活動をしているとの情報は、少なくとも私は一度も聞いたことがない。

 住民の皆様が本当に弁護士が必要だと真剣に思うのなら、無医村における医師のように高給を出してでも弁護士を誘致しても不思議ではないのだが、残念ながらそこまで真剣に弁護士を必要としてくれる過疎地は見たことがないのである。

                                                       (続く)

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