昔話~ホンダVT250F

 VT250Fは、私が大学生のころ、ホンダが出していた250CCバイクである。

 その名の通り、90度V型ツイン(2気筒)エンジンを積み、素直なエンジンの特性などから、多くのライダーが乗っていた、いわば定番バイクでもあった。

 私自身、グライダー部の後輩のO君に借りて、九州ツーリングをさせてもらったりした。O君のVTは、VT250Fインテグラと呼ばれるレーシングタイプのカウルがついた特別仕様車で、とても格好良かったことを覚えている。

 そのツーリングは、確かクラブの先輩と二人で行ったはずで、長崎や阿蘇のユースホステルを利用して九州北部を回った。

 かなり記憶が薄れているが、阿蘇では、ご来光を拝もうとユースホステルに来ていたライダー達10人ほどで大観峰まで走ったように思う。集団で走るのもなかなか面白いものであることを知ったのも、この時である。

 どこをどう走ったのかあまり記憶に残っていないのだが、ユースホステルで仲良くなった女の子と別の観光地で待ち合わせをすることになったとかで、一緒に来ていたクラブの先輩から突然、「一人で帰っていいよ」といわれ、帰り路が一人だったことは、なぜだか鮮明に覚えている。

 京都に戻り、その先輩に「○○さん、ひどいじゃないですか~。女の子とデートするために俺を見捨てるなんて・・・・」と苦情を言ったところ、「そんなこと、あったっけ?」ととぼけられ、諸行無常を感じたものである。

 「ボビーに首ったけ」という片岡義男の小説がアニメ映画化されたが、その中でも主人公はVTに乗っていたはずだ。エンジンパワーも、35馬力→40馬力→43馬力と、パワー競争に対応して上げられていた。

 私が乗った経験があるのは35馬力と40馬力のものだ。43馬力のVTはデザインが少し私好みではなく、興味が持てなかった部分もある。

 私も事情があってカタナイレブン(スズキのバイク)を手放した後、司法試験に合格した先輩から安くVTを譲ってもらって少し乗っていたことがある。

 カタナ自体は、デザイン的にも乗っているときの優越感等も含めて、とてもいいバイクだったが、VTはVTで、パンチのきいたところこそなかったが、乗り手を選ぶことがない、角の取れた素直なバイクだった。楽に乗れてそこそこ走れるという点で、決して悪いバイクではなかったと思う。

 今の私にはおそらくビッグバイクは手に余る可能性が高いが、VTくらいの素直なバイクなら、まだ乗れそうな気がしたりもする。それだけ扱いやすかった記憶が残っているバイクである。

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