とある法律相談~ 2013年10月10日投稿

2020年3月25日 0 投稿者: sakano

ある日の無料法律相談(一部ノンフィクション ※正確には事実を基にしたフィクションとしてお読み下さい。)

「HP見て電話したもんだけど」

「こんにちは、どうされましたか。」

「火災保険に入っていて火事にあったのに、保険金を払わないんです。保険会社は○○なんですけど、4000万円の火災保険を掛けていたのに現実には800万円しか出ないっていわれて、裁判してるんだけど、弁護士にもいまになって多分99%負けるといわれていて、絶対におかしいんです。」

「それは大変でしたね。でもどうして支払わないと保険会社は言ってるんですか?」

「だから火災保険の約款です。4000万円の保険掛けさせておきながら、出さないなんて絶対におかしいです。」

「約款ではどうなっているので支払わないと言ってるんですか?」

「約款通りだと、焼けたときの時価を支払うことになっているということらしくて、わずか800万円なんです。4000万円出るはずの高い保険料を払わせておきながらおかしいんです。」

「う~ん、保険というものは原則として損害の塡補、回復のためのものですから、基本的に保険で儲かることはおかしいんですね。ですから、新価特約(他に価額協定特約など)等が付いていないと火災によって損害を受けた時点の時価が基準となることは、一般論として、そうおかしなことではないと思います。」

「儲けようなんて思ってない。家を買ったときは2000万円だった。2000万円出して欲しいだけなんだ。」

「確かに○○さんの立場ならそう言いたくなると思います。でも、火災にあったときの時価は800万円なんですよね。そうだとすれば800万円の家が火事で燃えたから、火災によって生じた損害は800万になりますね。損害が800万円で2000万円もらってしまえば結果的に得することになる可能性が出ませんか?。」

「(むっとして)でも保険会社は、多めに掛けておけば安心だと言ったんだ。だから4000万円の保険に入ったんだ。私にとっての安心は、同じ家を手に入れるだけのお金2000万円が保険から出ることだ。それが出ないなんておかしい。結局うちの場合どうなるんだ?」

「4000万円と仰られても、どのような保険に加入されていたのか、お電話だけでは分かりかねますし、何より約款がどう規定されているのか分からないので、お答えのしようがないのです。保険内容を瞞したり、必要以上に過剰な保険を瞞されて掛けさせられていたのであれば、そこを争うことも可能でしょうが、大きな損害額を要求することは難しい可能性があるでしょうね。」

「でもおかしいことは分かるでしょ?」

「そのおかしいかどうかについて、保険の契約内容を確認しないと分からないと申しあげているんですね。」

「(だんだん大声になってきて)だって絶対おかしいし。何でもかんでも約款約款なんですかっ!。」

「ですから、約款の具体的内容が分からない状況では、私には分からないです。最低でも具体的事情を把握して約款見せて頂かないと。保険金の支払い条件などは、基本的には保険契約つまり保険契約の約款で決まっているんです。それも見ないで結論は出せません。お医者さんに行かれて、どこか悪いんだけど診て欲しいとか、家にいる息子の調子が悪いので薬を出してくれといってもきちんとした診断はできないですよね、それと同じことです。」

「(吐き捨てるように)なんだそりゃ。裁判しても、どうしても保険会社が勝つようになってるっていうんですか?」

「そんなことを言ってるわけではありませんよ。私だって依頼されて裁判して、保険会社からお金を払ってもらったことはありますよ。ただ、一般論として、申しあげれば自動車の車両保険ってありますよね。新車直後に全損したら新車価格に近いお金が出ますけど、買ってから10年後に全損になったら、自動車の価値が下がっていますから、わずかなお金しか出ませんよね、それと同様の状態にある可能性はあります。新価特約(他に価額協定特約など)がなされていれば別ですが。」

「その新価なんとかって、うちの保険には付いてるんですか?」

「それは、○○さんが、どのような契約をされているかを確認させて頂かないと分かりませんので、契約の確認ができない状態の私ではお答えできる質問ではないのです。今訴訟をやってもらっている先生にお聞き下されば、教えて下さると思いますが。」

「普通、新価なんとかって、セットになってるんじゃないですか?」

「ですから、それは、○○さんがどのような保険に加入されているかによります。何度も申しあげていますが、具体的事情が分からない状況だとお答えできないのです。先ほども言いましたが、例えば、お医者さんに行かれて病気の状態も見せずに診断はできませんよね。それと同じです。」

「(逆ギレして声を張り上げて)医者とかなんとか、そんなことを聞いてるんじゃあない。保険会社に責任がないのかって聞いてんだ!あんたホントに弁護士か。弁護士は弱い者の味方なんじゃないのか!弁護士なら何しゃべったていいって言うのか!こっちは被害者なんだ、被害者の身になってしゃべったらどうなんだっ!!」

ブツッ(電話を切る音)

私はこれまで、数十件以上の電話相談を受けてきた。分かりにくい火災保険について、ご説明するなどして、大抵相談者の方には御礼を言って頂いた。初回30分無料とHPには表示してあるけれども、丁寧に教えて頂いたので相談料を支払いたいと言って頂いたこともある。弁護士会のひまわり相談でも、チーフの先生に、坂野さんは対応、丁寧やな。と言って頂いた。

今回も、そうおかしな対応をしたわけではないと思っている。判断できないこと判断できないと正直に申しあげただけなのだ。

ここまで罵倒されたのは初めてである。

それはさておき、私が一番疑問に思うのは、多分99%負けるといっている弁護士がどうして提訴をしているのかということだ。もちろん、採算度外視で構わない、納得のためだけに訴訟をやりたいという方もマレにはいる。但し、今回の相談者は、お金に困っている。

おそらく採算度外視ではないはずだ。

訴訟を担当している弁護士は、○○さんに、きちんと見通しを話したうえで訴訟を提起したのだろうか。

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