進みつつある司法占領?金子大阪弁護士会会長の「混合法人」報告レジュメその5~ 2010年04月25日投稿

2020年3月9日 0 投稿者: sakano

 金子会長は、国際化した弁護士会につき、イギリス・ドイツ・フランスを分析対象に挙げている。

① イギリスの場合~弁護士自治の崩壊

 弁護士数も多く、世界に多くのローファームを進出させているイギリスにおいて、2007年の法律サービス法によりついに、ソリシター(事務弁護士)の弁護士自治が廃止された。
イギリスでは、伝統的業務を扱う「ハイ・ストリート・ソリシター」(日本でいうところの町弁護士)と、企業法務を中心に扱いグローバルに展開する「シティ・ファーム・ソリシター」(企業弁護士)との間に、先鋭的な2極化現象が生じたのだそうだ。

1991~1992年時点では、全事務所の1%にあたる大事務所だけで全ソリシターの売上の41%を稼ぎ、全事務所の80%を占める中小事務所は売上の僅か25%に止まっていたそうだ。
企業弁護士の関心は、規制緩和や国際競争力の維持・増進に集中し、弁護士会(ロー・ソサエティ)の介入を嫌うため、弁護士会に無関心であり脱退したり、加入しない者も増加していたらしい。
この町弁と企業弁護士の対立は先鋭化し、ついに2007年にソリシターの弁護士自治は失われた。 

ここで、今般の日本の司法改革は、誰のための司法改革であったのかということを、私(坂野)は思い起こさずにはいられない。
たしか、国民・市民の社会生活上のための司法改革であり、だからこそ、「弁護士は社会生活上の医師である」とのスローガンが唱えられていたのではなかったか。だとすれば、国民の間に入っていくべき町弁について、町弁がきちんと活躍できるよう、国民の皆さんが町弁に依頼しやすくなるように制度を構築する必要があったはずだ。しかし現実は、町弁に依頼しやすくなる制度は殆ど準備されず、弁護士数の激増だけが実現しているのだ。

 また、イギリスのように弁護士が弁護士自治を失えば、国家や国家権力に比肩する力を持つ大企業と、個人が、対等に戦う土俵自体の存在が危機に瀕することは、おそらく間違いないだろう。極論すれば、国家相手に訴訟を提起する弁護士の資格を全て剥奪してしまうことも、弁護士自治を奪えば可能となるのだ。

 まだ、そのような極端な弊害が出ているとの分析まではなされていないが、そういう可能性があり得る制度に変更されたということは、司法の瓦解につながるのではないかという危惧を覚える。

いたずらに、欧米をまねて欧米並みに弁護士を増加させることは、本当に国民・市民のためになるのか、それとも企業の活動のみ自由にする傾向に拍車をかけることになるのか、日本の司法改革の推進者自体が明確に自覚しているのかどうか、私には分からない。

ただ、欧米の弁護士制度について、その制度で本当に良かったという、欧米の国々での国民の声はあまり聞かれないように思う。むしろ、法律家は悪しき隣人だという、弁護士などに対する批判的な論調が主であるように感じられることは、おそらく間違いではないように思う。(企業ですら、欧米ローファームの要求する高額なリーガルコストに辟易しているのが本音ではないだろうか。)

金子会長の分析は、次にドイツ・フランスについても及ぶ。(続く) 

※この連載には、金子会長のレジュメを紹介しつつ、私、坂野の個人的意見も含まれています。金子会長のレジュメに関しては、連載最終回にご紹介しますので、あしからずご了承下さい。

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