最も簡単に懲戒処分を受ける方法~ 2009年06月22日投稿

2020年3月4日 0 投稿者: sakano

 私が以前勤務していた法律事務所で、ボスだった先生から冗談で、「坂野君、最も簡単に弁護士会の懲戒を受ける方法を知ってるか?」と聞かれたことがあります。

 そのとき私がどう答えたのか忘れましたが、先生の仰る正解は、「会費の滞納」ということでした。

 弁護士は弁護士会費を毎月納める義務があり、その額は馬鹿になりません。大阪では、現在、日弁連会費と合わせると毎月5万円弱の弁護士会費が必要になり、滞納すると懲戒処分を受ける危険があります。

 ただ、病気で仕事のできない方や出産で休業されるなどの方にまで、弁護士会費を納めるよう強く求めることは問題があるので 、申請により会費減額・免除をしてもらえる場合があります。

 大阪弁護士会会則161条の運営準則一、(一)、(1)には、会費の減額・免除が可能な場合(のひとつ)として、こう書かれています。

「会員が疾病その他やむを得ない事情により、弁護士業務の執務不能等となり、会費の支払いをなすことが経済的に困難であると認められるとき。」

 つまり、長年弁護士をやってこられてある程度の資産も形成されたA弁護士が、病気で執務不能となった場合に会費減免を申告すれば、A弁護士は会費減免が認められる可能性が高いことになります。

 一方、苦学して合格し即独された新人弁護士Bさんが、どんなに仕事をしても営業努力しても赤字であり、受験時代にこさえた借金もあり、弁護士会費の捻出が困難であるとします。B弁護士のような方も今後は出てこられる可能性は否定できないでしょう。

 さて、B弁護士さんは上記の規定で、月額5万円弱もの弁護士会費を減免されるのでしょうか。

 運営準則を素直に読めば、会費減免が認められる要件は①疾病その他やむを得ない事情により、②弁護士業務の執務不能等となり、③会費の支払いをなすことが経済的に困難であると認められるとき、の3要件です。

 仮に即独して一生懸命努力しても赤字経営の方の場合、③は明らかに満たすでしょう。①は一生懸命に営業しても仕事がないのであれば、それは即独弁護士Bさんのせいではないので、「やむを得ない事情」に読み込むことは不可能ではないかもしれません。

 最もクリアーしにくいのは②の要件です。①を受けてやむを得ない事情により弁護士業務の執務不能等にならなくてはなりません。執務不能ではなく、執務不能等ですから、ちょっと無理かもしれませんが、仕事不足も仕事をしたくてもできないという面で執務不能と同じだからと理屈をこねて、執務不能等に読み込んでしまえば、条件クリアーとなる可能性は(極めて低いですが)ゼロではないかもしれません。しかし、おそらくそこまでは解釈を拡大することは困難でしょう。

 確かにA弁護士は弁護士としての業務ができない状態ですから弁護士としての活動はほとんどないでしょうし、弁護士会も利用しないでしょう。これに対して、B弁護士は、弁護士としての活動を一生懸命していますから、弁護士会費を払うべきだという考えにも一理あるでしょう。

 しかし、現実の問題として、A・Bのいずれの弁護士が弁護士会費免除を受けるに相応しいかというと、素朴な疑問が生じます。A弁護士は長年弁護士資格を用いて資産形成もできており、(病気は心配ではありますが)今後の生活はそう不安はありません。一方、B弁護士の方が今まさに現実の生活において明らかに困窮しているからです。

 私は個人的には、若手会員の会費減免という、その場しのぎの策では事態の根本的解決にならないという意味で、若手の会費減免には反対です。

 しかし、私の個人的意見とは別に、上記のとおり、純粋にどちらが困っているかという観点からA・Bを見たときに、免除すべきなのはB弁護士の会費なのかもしれない、という素朴な疑問が生じてしまいます。

 その疑問が生じる理由は、会費減免規定が、弁護士は食うに困ることはないという前提で作成されているからではないかと考えられます。「弁護士稼業を一生懸命にやっていれば生活に困ることはないだろう。だから、弁護士稼業を行っている以上弁護士会費を払うべきである。」という考えがこれまでの弁護士達の根底にあるのではないでしょうか。

 また、弁護士会費が増大の一途をたどり、月額5万円弱までふくらんでしまったのも、「弁護士会の費用が不足するならば、会費を値上げすればいい。弁護士が食うに困ることはないはずだから。」という考えが根底にあったような気がしてなりません。強制加入団体でこれほどまで高額の費用を徴収する団体はおそらく他にはないでしょう。

 もし、私の考えが当たっているとするならば、弁護士をさらに増員し、もっと競争を激化させようとされる先生方は、会費大幅削減・会費徴収に関する手当も提案していく必要があるように思うのです。どうも弁護士の潜在的需要はある、今までの増員ペースで問題がないと仰る方は、何故か時代(状況)の変化を、ある意味で無視し続けているような気がするのです。

 早く気付いて下さい。「自分は裸の王様かもしれない。」、と。

Follow me!