やっぱりひどいと思う国選報酬~ 2008年10月27日投稿

2020年3月2日 0 投稿者: sakano

 ある会社員の方が、得意先を回る際に、「会社から8キロ以上遠方でないと、地下鉄代も出さないよ。」と会社から言われたら、8キロ以内の得意先に徒歩でまわる気力が出るでしょうか?

 仕事のためにどうしても必要なコピーを、やむを得ず自分が費用を出して行い、その費用を会社に請求したときに「コピーなんてせずに、見て覚えてくればいいだろう。コピーしちゃったらしょうがないけど、そのコピー代も君の給料に含まれているから、200枚を超えた部分のコピー代しか出さないよ(200枚までは自腹を切れよ)。出すとしても、君がコピーにかかった費用の半分以下しか出せないよ。」と言われたら、いくら仕事に必要だとしてもコピーを取る気がするでしょうか?

 さらに、仕事にどうしても必要な郵便を出す場合に、その郵便費用も全て自腹とされたらどう思うでしょうか?

 しかも、上記のようなとんでもない得意先回り・コピーが必要とされる仕事を一生懸命やればやるだけ、他の仕事がきつくなる上、なんとか成果を上げても評価されないとすれば、会社員の方は、やる気が出るでしょうか。

 実は、上記のことは全て国選弁護に当てはまるのです。

 国選弁護では、交通費は報酬に込みとされており、8キロ以上の交通費でないと支給されません。8キロ以内は「地下鉄もバスも贅沢だ、歩け!」と言うことのようです。

 また、被告人にとっては接見(面会)は唯一の外界との接点であり、弁護方針等を決めるためにも非常に重要な行為ですが、8キロ以上の遠方でないと交通費も出ない、どれだけ時間がかかっても評価されないのです。時間をかければかけるだけ、充実した弁護のために接見をすればするだけ、弁護人が損をする(自腹を切らなければならない)仕組みになっています。

 刑事記録の閲覧権は弁護人にありますが、閲覧するにも検察庁に出向く必要があり、その交通費も出ません。

 きちんと刑事弁護しようと思えば、刑事記録のコピーは不可欠ですが、 コピーは特定の業者しか扱っておらず、なんと一枚42円もします。しかも否認事件など特殊な事案でない限り、200枚を超える部分のコピー代金につき一枚20円が支給されるだけです。

 つまり、仮に350枚のコピーが必要であった場合に、弁護人が負担するコピー代は350×42=147000円ですが、国選弁護で支給されるコピー代金は、(350-200)×20=3000円です。つまり11700円を弁護人個人で負担しろということなのです。

 お金のない被告人がお詫びの手紙を書いて、弁護人を通じて郵送して欲しいという依頼してきた際に、弁護人が被告人の弁護に必要と考えて、お詫びの手紙を郵送する切手代すらも、国選弁護では出してもらえません。

 このように、国選弁護は良い弁護をしたければ、弁護人に自腹を切れということに制度上なっています。

 それでも、成果が上がったときに評価してくれるのであれば、まだ救われますが、どれだけ沢山の事務をこなしても、求刑からどれだけ減刑させても、評価にはつながらないようです。私の今回の国選弁護では、追起訴が4件もあり、合計で事件数は5つになりました。単純に考えれば、事件数が一つの場合の5倍の手間がかかっています。求刑だって検察庁が法律を適用し、求刑相場にしたがって、行われるものであり相当の根拠があります。その検察官の求刑(5年)から、半分に減刑させ、未決勾留日数も90日算入してもらえました。被告人は実質2年3ヶ月の刑になったのです。

 しかし、それでも、評価の対象にはならないそうなのです。

 どれだけ自腹を切って、頑張って時間をかけて弁護をし、なんとか良い結果を出したとしても、何の評価もないのであれば、やる気は当然失せていくでしょう。

 私は、税金で育ててもらったという思いがあるので、まだ国選弁護をやってはいます(但し、現在では積極的に受任するわけではありません)が、あまりの仕打ちにやる気がどんどん失せつつあります。

 一生懸命に弁護している弁護士にとって、国選弁護を黒字の仕事にすることはできないでしょうが(私の経験上、断言できますが、経営者弁護士が国選弁護だけで経営を維持することは、手抜き弁護をしない限り絶対に無理です。)、せめて実際にかかる経費くらいは支給してもらいたいものです。

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