ゴルフのこと~4~2016年7月21日掲載

2020年2月5日 0 投稿者: sakano

 不名誉部長に任命されたどころか「マリオネットS」という有難くない徒名まで頂戴して、さすがにS弁護士も、熟成理論にこだわっていることが出来なくなってきた。

 部長と呼ばれ、マリオネットのようにOBを打ちまくり、顔で笑って心で泣き、秘かに屈辱に堪え忍ぶ日々を送っていたS弁護士であった。

 しかし、2015年1月7日のIS田会、「大宝塚ゴルフクラブ」で前半63,後半83、合計146(もちろんパー72である。)と驚異のスコアをたたき出してしまったことをきっかけに、これまですがっていた熟成理論をうち捨て、ついに打ちっ放しに練習に行ってみることにしたのだ。

 新生S弁護士(ゴルフに前向きver.)の誕生である。

 しかし、練習に行ったからといって、身体が入れ替わるわけではなく、能力がすぐに身につくわけでもない。つまり、心を入れ替えて練習に励むつもりで臨んでも、直ちにクラブにボールがきちんと当たってくれるほどゴルフは生やさしいものではない。

 張り切って真冬の練習場に乗り込んだものの、打ちっ放しに敷いてある人工芝を通して、コンクリートの床をドン!・ガン!とぶったたく、まるで道路工事のような騒音を立てる練習となった。

 あまりの音に、S弁護士の近くで練習していた人が2階の打席に移動したくらいだった。冷え切った固いコンクリートの床と戦い、悴む手を温めながら騒音を立て続けるS弁護士も自分の手首に痛みを感じていた。

 ボールはやっぱり、まともには飛んでくれない。

 たまに早めに帰宅できた日には、寒い中を震えながら、2時間ほど練習場に通ってみたものの上達する気配は全くない。

 やはり、不名誉部長の返上は適わないのか・・・・。

 打球を打ってはいけない方向をささやかれ、その悪魔の囁きにあらがえず、悪魔の期待通りに囁かれた方向に打ってしまい、肩を落としながら悲嘆に暮れるS弁護士の後ろで、同伴者達が交わし合っている(と思われる)楽しそうな笑みが目に浮かぶ。

 そもそも、IS田教授なんかレッスンプロに習っているくせに、部長制度を創るなんて狡いじゃないか。などと、自らがゴルフレッスンをやめたはずなのに、八つ当たり的な発想もS弁護士の脳裏をよぎる。

・・・・・悔しい・・・。

 全然あかんわ~と、ゴルフ歴の長い友人のM弁護士に愚痴ったところ、「やっぱ、コースに出なあかんで。」とのこと。

「練習場ではあかん?」

「そりゃあ全然違うはずやで。練習も必要やけど、どんどんコースに出なあかんわ。」

 何事にも先達あらまほしきものなれ。

 経験者の言葉は傾聴に値するものだ。

 それならばコースに出てやろうではないか。

 かといってゴルフは、基本4人一組、どんなに少なくても2人一組で回るもの。なかなか1人でというわけにはいかない。

 さりとて、同期の弁護士たちはとっくの昔からゴルフをやっていて、大差が付いている。しかも弁護士という人種は基本的にはわがままだから、下手すぎる人と一緒に回ることを嫌がる奴もいるし、寒い冬や暑い夏はゴルフをやらない人も多い。

 くどいようだが、S弁護士の直前のスコアは146。このスコアで「下手ではない」と主張しても裁判では、「原告の主張は客観的な証拠に沿わない独自の主張と言うべきであって、当裁判所の認定を左右しない。」とあっさり下手くそ認定されるはずである。しかも、今は冬である。

 思案に暮れていたS弁護士だが、インターネットによれば、1人でもゴルフをしたい人を集めてゴルフをさせてくれる、1人予約という便利な制度があることが分かった。

 子細に見てみてみたが、少なくとも、「下手な人はお断り」とは書いていない。

 ということは、不幸にもS弁護士と同じ組になって、S弁護士の秘奥義「無念芝刈り斬~球飛ばずver.」等の珍プレーを見せつけられたとしても、それは制度の問題であってS弁護士のせいではない。

 かの宮本武蔵だって、他流試合で実力を付けたと書いてあったような気がするし、仕事柄、初対面の人と話すことは、苦にしないほうだ。

これだ。

やってみよう。

 物事には、いつかやろうと思っていても、「いつか」なんて来ないこともある。やろうと思ったら多少無理してでもやっておいた方が後悔は少ないというのがS弁護士の持論である。

 S弁護士は、20歳代で中学の友人を2名、大学のクラブの友人を1名、事故で亡くしており、さらに40歳代大学の同級生の友人・知人を既に2名ほど食道癌で亡くしているので、その思いは比較的強い方だと思う。

 思い起こせば、高3のときに、好意を抱いていた同級生に告白して轟沈したが、それも今となっては、良い想い出になっているではないか。

よくやった、そのときの俺!

人生なんて、所詮うたかたの夢、邯鄲の夢枕。いつ終わっちまうか分かったものではない。

よし、やってみよう。

と、たかがゴルフの予約を入れるのに、散々自分を鼓舞したうえで、S弁護士は緊張する手で日曜日の1人予約を入れたのであった。

やると決めたんだ、やってみよう。

(続く)

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