法テラスの弁護士報酬削減案~2015年10月30日掲載

2020年2月4日 0 投稿者: sakano

※ツイッター等でご指摘を受けましたとおり、以下の記事は誤解を含んでおります。  少年事件の広告に関しては、日弁連委託援助事業のようです。

 お詫び致します。

 なお、記事については後日訂正ないし削除する予定ですが、公開した以上、それまでは掲載致します。

   月間大阪弁護士会の記事によると、法テラスが法律援助事業に関する弁護士報酬の改定案を出しているようだ。改定案と聞けば聞こえは良いが、要するに弁護士報酬の削減を目的としたものだ。  現在の改定案の項目で、援助金額の大幅な切り下げになるのは次の2項目であるとのことだ。

①家裁段階の付添人が、抗告(審判に対する不服申立。大人の事件でいえば、判決に対する控訴などと同じと考えて頂ければ分かりやすい。)を受任する場合の援助金額を7万円に減額

②抗告段階の付添人が再抗告を受任する場合の援助金額を5万円に減額  ただでさえ、国選弁護制度、国選付添人制度は、経営者弁護士には完全な赤字案件というべき費用しか出ていないのに、法テラスは援助金額をさらに削減しようとする気のようだ。  

法テラスはどこまで、弁護士の善意に寄りかかった運営を行うのか。それとも、どんなに赤字でも仕事がないよりマシだろうから、どれだけ安くても仕事を受けるだろうと、足下を見ているのか。  どこの世界でも、サービスに見合った対価は必要だ。それが保たれてこそサービス業が成り立っているはずだ。  

私の感覚からすれば、経営者弁護士であれば1人事務所であっても、家賃・事務員の給与・リース料等から、時給20000円以上で仕事をしなければ、赤字になる可能性が高い。費用に見合った仕事をするとなれば、経営者弁護士は少年事件抗告審には3時間半以上かけられないことになる。しかし、手抜きをしても、少年事件抗告審は3時間半で終わるような仕事ではない。仮に手抜きをして3時間半で終えられたとしても、事務所維持のための経費に1時間20000円以上かかっているので、実質上所得は0円だ。

 少年事件の抗告は、大人の刑事事件と異なり、取り敢えず控訴期間(14日)中に控訴状だけ出してあとは控訴趣意書をゆっくり作成すればいいというものではない。抗告の理由も含めて14日以内に書面を作成して提出する必要があるため時間的には極めてタイトである。しかも、家裁がどういう理由でその処分を下したかについての審判書が、大抵出来上がっておらず、出来上がって謄写できるのが抗告期間切れの3日前、という状況だってありうる世界だ。判決文を見て初めて裁判官の判断の過程が分かるのと同様、審判書が出来上がっていなければ、どの部分で審判官が何を評価してこの処分にしたのか、そのどの部分が誤っており、抗告審で正されなければならないのか明確にならないのだ。  しかも、予め準備しておけばその書面がそのまま使えるわけではない。事案が違うから当たり前だが、一つ一つがそれぞれの弁護士が苦労して身に付けた職人技を駆使したオーダーメイドの書面なのだ。

   以前、知り合いの医師に、弁護士がどれだけボランティア精神で、どれだけ割に合わない仕事をしているのかについて説明したところ、帰ってきた感想は「弁護士ってそんなに余裕があるンや」というものだった。世間の見方は、おそらく同じなのではないか。  

弁護士や弁護士会が、人権のためだと理想に燃えてやせ我慢したところで、世間は理解してくれず、むしろ、それだけ余裕があるならもっとボランティアをしても良いだろうと考えても不思議ではない。だから、堂々とただでさえ赤字程度しか出さない弁護士費用を、法テラスはさらに削減すると提案してきているのではないか。

 悪いが、弁護士がストライキでもしない限り、法テラスはさらに足下を見てくる可能性が高いだろう。  

 なお、法テラスは自前で弁護士を雇用して、仕事をさせてもいるから、民業圧迫きわまれり、といった状況にもある。

 私は、6~7年ほど前ある会合で、もと大阪弁護士会会長の方で、法テラス導入に尽力した方に、「法テラスは弁護士費用の立て替えをする機関であって、弁護士費用を下げるものではないはずだ。さらに自前で弁護士を雇用して事件解決にあたるとは民業圧迫ではないか。」と意見したことがあるが、お答えは「仕事が増えたんやから良かったやないか。これから仕事に見合うお金を出すように言っていけばいい。」というものだった。

 その先生がどれだけ法テラス案件をこなしていらっしゃるか知らないが、仕事に見合うお金が出てくるどころか弁護士費用切り下げとは、どこまで弁護士に負担を押しつければ気が済むのだろうか。

 このような状況下で、日弁連は法曹志願者の減少対策として、法曹の魅力を訴えていくそうだが、法曹志願者がそれで回復するのか。 どこか間違っているような気がしてならない。

Follow me!