弁護士感覚とビジネス感覚~2015年1月23日掲載

2020年2月4日 0 投稿者: sakano

 弁護士感覚とビジネス感覚はときにぶつかり合うものだ。

 言っちゃあ悪いが、やっていることは普通の弁護士とほとんど変わらないにもかかわらず、○○専門、凄い実績!と、専門的な内容を知らない大々的に営業を行って、今までの通常の弁護士費用と比較すると法外と言えるほど高額な弁護士費用をふんだくろうとする法律事務所も実は存在する。

 他の弁護士からも、いろいろ実例は聞くが、私が経験したのは次のような案件だった。

 合意の上で女性と関係を持ったある男性が、その後女性から「合意はなかった、告訴する」と言われ、インターネットで調べた刑事専門を謳う法律事務所に相談に行った。  ところが、相談を受けた弁護士から「その案件は、あなたでは解決できない。絶対に女性から告訴される。そうなるとあなたは今の職も社会的地位も失う。それが嫌なら、私が解決するから、示談費用とは別に300万円(税別)をもってすぐ来なさい。」と言われたという。

 その男性は、とてもそのような高額な費用を準備できないということで、私のところに相談に来たという案件だった。

 私が男性から話を聞いてみると、○○という事情等(特定防止のために伏せ字)から、告訴の可能性は高くはないとすぐわかる案件だった。しかし、あまりにその男性が心配するので、「今後の社会生活を安心して送るために、ある程度の解決金で解決する方向はどうか」と提案し、交渉の結果、もちろん告訴しない約束を盛り込んだ上で数ヶ月後に若干の解決金で示談することができた。弁護士費用は着手・報酬金合わせて某事務所の着手金の10分の1以下であった。

 仮にその男性が受けたという某事務所の説明が真実だったと仮定した場合、上記法律事務所の担当弁護士の説明は、かなり不当な説明であると言わざるを得ないだろう。相手の女性から告訴すると言われ不安に陥っている人に、弁護士が「絶対告訴される」と言えば、誰だってさらに不安に陥れられ、まともな判断など出来なくなるだろう。その状況に追い込んでおいて、弁護士費用の相場も知らない人に法外な値段をふっかければ、心に余裕を持てない状況にある人は、藁をもつかむ思いでその費用を出そうとするにちがいないからである。

 そして、上記のようなやり方は、弁護士感覚からすれば弱者を窮地に追い込んで食い物にする許されるべきではない手法である。しかし、そのような法律事務所の売り上げがどんどん伸び、利益を上げているのであれば、ビジネス感覚からすれば、その手法は正しいと言えてしまうのだ。

 新自由主義下の規制緩和・自由競争の社会では、手段はどうであれ、結局は儲けた者勝ちであり、儲けられない者は退場せざるをえない。そして、弁護士も自由競争するようにマスコミは叫び続けているし、大量の就職未定者を出しつつも弁護士大増員は未だ止められていない。

 実際にそのような噂を聞く法律事務所の所長弁護士が経済誌に取り上げられたり、弁護士マーケティング本で成功例として取り上げられている可能性すらあるだろう。ビジネス感覚からすれば、現に儲けていることは正義なのだから。

 新自由主義下では、儲けた者だけが勝者であり、正義とされる傾向にある。また、自由競争に伴う弊害が生じたとしても、それは自己責任(そのような弁護士を選んだ者の自己責任)とされてしまうことがほとんどだ。

 でも、本当に自己責任で片付けて良いのだろうか。

 どこかが狂っている。  

そんな気がしてならない。

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